抄録
用例中の多義語の語義が,一般的な読み手によってどのように認定される傾向にあるのか,印象評定を用いた調査を試みた.計算機用日本語基本辞書IPALに含まれる用言(形容詞・形容動詞・最重要動詞,計530語)全文型の例文(5,125例)に対し,文や用法に関する読み手の印象評定,分類語彙表番号と山崎・柏野(2017)の代表義情報を付与した.多義語の語義における代表義と印象評定を対照し,代表義の印象傾向を分析した.また,各用例の代表義を算出することで,見出し語における読み手が典型的と考える用例を抽出した.読み手の印象評定傾向から,助詞をはじめとする周辺語彙の差異により想起される文脈が異なること,文脈情報が用例の意味認定に関わる可能性を考察する.