抄録
本稿では,江戸期と明治期を中心とする,日本語と沖縄語訳の「ヨハネによる福音書」のパラレル・コーパスの構築とスタイロメトリーによる分析について述べる.これまでの日本における聖書翻訳研究は数多くなされてきたが,それらをパラレル・コーパスとして一元化されたものは存在しなかった.本研究では,19世紀のギュツラフ訳,ベッテルハイム訳(沖縄語),ヘボン/ブラウン訳,明治元訳,スタイシェン/高橋訳,20世紀前半のニコライ訳,ラゲ訳,大正時代以降の大正改訳,永井訳,左近訳の「ヨハネによる福音書」のデジタル・テキストを収録し,それをオンラインのコーパス・ツールとして概観と設計を示している.ここでは,Omeka Sの使用により,Linked Open Data(LOD)に準じてコーパス・データを出力可能にしている.そして,これらのコーパス・データをstyloというスタイロメトリー(文体統計学あるいは計量文献学)の分析を行うR言語パッケージを用いて,各翻訳間の文体の類似度や影響関係を計量的に分析した.この研究は日本近代語の形成に対する聖書翻訳の影響を深く理解するための一歩であり,デジタル・ヒューマニティーズへの貢献も意図している.