抄録
2005 年8 月から2007 年7 月までの新病院移転後2 年間の気分障害の実態を著者が初診者として診察した114 名について調査した。 研究の主な目的は30 歳代を中心とした気分障害の増加を確かめ、その特徴を把握することであった。 結果は30 歳代発病の気分障害が年代的に最も多く、20 歳代も多いことが明確になった。従来、臨床の場では気分障害(うつ病)は4,50 歳代中心に発病した例を診ることが多かった。日本では20 年程前から若年(2,30 歳代)の気分障害が少しずつ増加してきた。最近ではマスコミでも取り上げられてきた。国民にも、企業にも大きな問題となってきた。 若年者気分障害の特徴として、男性は仕事の厳しさに由来する「疲弊うつ病」として発病することが多かった。女性ではむしろ逃避的な「神経症的うつ状態」が多い傾向が窺えた。 これらの気分障害、特に若年者気分障害の増加は主要には激しい社会変動の賜物と思われる。しかし、他に国際疾病分類の普及による「うつ病概念」の拡大と、激増した精神科クリニックによる受診のし易さ、も関係あることを述べた。 共同体意識の後退と大競争時代に特徴付けられる現代の社会変動の中で、集団への帰属意識に根を持つ執着気質の利用価値は軽減した可能性を指摘した。それに伴い若年気分障害の自責感情や本格的自殺企図は多くなく、特に女性では他罰的傾向の増加、擬似自殺の増加をもたらした。自己に甘く、権利意識のみの一部の若年者の脆弱性も問題にした。 厚労省の労働災害に関する報告は「労災認定された精神疾患の40%が30 歳代であり、労災認定された自殺者の98%は男性であり、女性は2%だった。又30 歳代が多いこと」を示していた。最後に気分障害に陥らない予防について私見を述べた。