抄録
Gemella haemolysans、Gemella morbillorum は、人の咽頭、上気道、泌尿器、胃腸の常在菌である。通性嫌気性グラム陽性球菌であり同定が困難である。菌血症、敗血症の原因菌としては非常にまれな菌であり、カテーテル感染に関して報告はない。このたびわれわれはGemella 属による菌血症、カテーテル感染を経験したので報告する。 症例は高齢男性。誤嚥性肺炎で入院し、肺炎の治療経過で菌血症を起こし、複数回にわたり血液培養で同様の球菌が検出された。当院検査部での原因菌の同定が困難であり外注検査に依頼してGemella 属による菌血症であったと判明した。本患者は経過中に埋め込み型中心静脈カテーテルを留置しており、カテーテル感染も併発したため、埋め込み型中心静脈カテーテルの抜去を必要とした。またGemella 属はこれまでの報告では、penicilin をはじめ多くの薬剤に対して感受性を持つといわれているが、近年耐性菌の報告がされている。このたび分離されたGemella 属で感受性検査を行ったが、ベータラクタマーゼ産生菌であり、amikacin 以外の薬剤に対して耐性を示していた。感受性検査結果で耐性を示していたが、感染源の除去と経静脈的抗菌剤投与で菌血症は軽快し、患者は退院した。