抄録
精神発育遅滞で、重症心障者施設に入所中の30 歳、女性。腹部手術歴は無かった。腹部痛と嘔吐を主訴に当院救急外来へ搬送され、各種検査で腸閉塞と診断された. 消化器内科でイレウス管が挿入されたが、挿入後も症状が全く軽快しないため当科へ紹介された。腹部CT 検査像の見直しによりwhirl sign が確認され、腸回転異常の存在および小腸軸捻転症を疑い、緊急手術を施行した。開腹すると、回腸が上腸間膜動脈を軸に時計方向に約360 度回転しており、これを用手的に解除し消化管を温存した。その際、移動盲腸の存在も明らかとなった。腸管固定術を行うか否か検討したが、当手術による癒着が生ずると考え施行せずに閉腹した。術後経過は順調であり22 日目に転院した。腸回転異常症の多くは新生児期までに何らかの消化器症状で発見されるが、当症例のように成人になって発症することは少なく、まれな例を経験した。消化管を温存できるか否かは画像検査を駆使して早期診断することにかかっており、特に腹部CT 検査が有用であると思われた。