松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
早期新生児期における直接授乳困難と母体側の身体的要因
金井 眞理子三島 和子中村 衣通子上田 真理子鯉田 碧
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2010 年 14 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

母乳育児は母児相互作用の原点であり、母児双方にとって多くの利点があることは広く知られている。しかし、新生児の中には母の乳頭型には大きな問題が無いと思われるのに、乳頭の吸着・吸啜を拒む児がいる。このような直接授乳困難例の報告は多くあるにもかかわらず、その要因について検討された報告は極めて少ない。本研究では、早期新生児期において直接授乳困難をおこす要因を明らかにすることを目的に実施した。対象は、平成20 年1 月~平成20 年5 月までの期間に当院産婦人科病棟において、正期産で分娩した褥婦及び正常早期新生児とし、褥婦に研究の趣旨及び方法を説明し、同意の得られた49 例に分析を行った。その結果、対象母児49 例中8 例に直接授乳困難(A 群)を認めた。その要因として、初回吸着・吸啜困難、帝王切開、微弱陣痛、初産婦において関連性を認めた。さらにA 群の帝王切開群(8 例中5 例)の最終妊婦健診時BMI 値は平均27.9 と高く、また、正常分娩1 例を除く7 例において予定日超過などによる誘発分娩又は帝王切開などの医療介入があり、これらの結果、直接授乳困難へと連鎖する可能性が示唆された。また、分娩の集約化が進む周産期を取り巻く現状の中で、本研究においても紹介や里帰り事例が49%を占めた。妊娠から分娩、産褥までの一連の継続した指導が困難になっている状況にあるが、今後連携を含めた妊婦自身のセルフケア能力を高める日常生活指導がますます重要と思われる。ひいてはその事が正常分娩につながり、スムーズな母乳育児へのスタートにつながると思われる。

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