松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
歯科治療恐怖症に対する当科での取り組み
石倉 信造吉田 剛金森 一渓松村 正啓扶風 大作
著者情報
キーワード: 歯科恐怖症, 発症時期, 原因
ジャーナル オープンアクセス

2010 年 14 巻 1 号 p. 9-14

詳細
抄録

歯科恐怖に関する疫学調査のために国際的によく用いられる質問票として小児用のDental Subscale of Children’s Fear Survey Schedule(CFSS-DS)と成人用のDental Fear Survey(DFS)がある。一般に強い歯科恐怖を抱くものの割合は5~22%と報告されており、それらの患者は静脈内鎮静法の併用や全身麻酔下でなくては十分な歯科治療ができない。歯科治療恐怖症の診断基準は無く、臨床的な判断が求められる。このため、平成21 年1 月から約3 か月間に当科を受診した初診患者を対象としてCFSS-DS またはDFS の質問票を自記筆していただき、60 点以上となったものを歯科治療恐怖症と診断し、治療を行った。それにより生じた問題点と歯科治療恐怖症の発症時期と原因に対しても調査した。その結果、一般歯科治療をおこなうことは可能であっても麻酔を含む観血的な外科処置に対するものだけに特別な恐怖心を訴える症例もあり、CFSS-DS またはDFS のみの判断では患者に苦痛を与える危険性が示唆された。発症時期は一般に幼児期に多いとされているが、非験者の記憶によるとその時期に限ったものではなかった。歯科治療恐怖症となる原因はトラウマ的な特に疼痛や苦痛をともなう歯科治療経験が引き金になると報告されており、当科でも同様な結果であった。

著者関連情報
© 2010 松江市立病院
前の記事 次の記事
feedback
Top