2010 年 14 巻 1 号 p. 63-68
4 症例を通して、統合失調症者を中心とした精神障害者の身体合併症へ対する治療の同意能力を中心にインフォームド・コンセントについて検討した。また、ターミナルについて報告した。①経験的に、長く治療関係を保っている精神障害者の同意能力は通常の人に劣ることはほとんどない。②治療を拒むことは精神障害の人でしばしばあることだが、有効性の高い身体疾患への治療について主治医は治療を勧めるべきであるが、最終的には本人の考えに委ねることが大切であろう。③身体合併症(特に癌)を持って最後をむかえる精神障害者(統合失調症者)は概して通常の人のそれに比べて淡々としている。④医療者は単なる延命だけを目的とするよりは本人・家族の意思による生き方と死に方に配慮する幅が必要である。⑤結局インフォームド・コンセントは本来、患者と治療者の共同意思決定のためのプロセスであり、治療的信頼関係を築く文脈で構成されるもので、客観的基準などを設けるとか、法的手続きとしてのみ強調されることには危うさがある。