抄録
症例は64 歳女性。近くの病院で単純肺CT を受けた際、甲状腺腫を指摘され当科紹介となった。受診時、軽度の嚥下時の違和感を訴えた。触診で甲状腺左葉部に比較的軟らかい5 cm 大の結節を触知した。超音波検査では甲状腺左葉下極に縦隔に伸びる長径4.1 cm 程度の等エコー腫瘤を確認した。縦隔内の状況が不明なため造影CT を施行したところ、縦隔内に分葉状の独立腫瘍を認めた。自覚症状を有するため、手術を施行した。手術は前頚部小切開で行った。甲状腺左葉の腫瘍を部分切除後、術前の予想通りに左上縦隔内に独立した腫瘍を確認し、摘出した。浸潤や癒着さらに独自の栄養血管はなかった。左葉腫瘍は5.5×3.0 cm、26.9 g、縦隔腫瘍3.9×2.8 cm、10.9 g であった。縦隔内甲状腺腫が疑われる症例では造影CT は有用であると結論する。