抄録
松江市立病院は高度ながん診療体制整備の一環として,がんセンターを開設した.がんセンターの使命は,高いがん医療体制を確保し,地域医療機関との連携を図ることにより,がん患者の療養生活の質の維持向上を図るとともに最新の情報や研修の場を提供し,さらにはがんの専門職を育成することにある.地域の高齢化にともない,当院でも65 歳以上の高齢者が入院患者の約60 %を占めている.高齢のがん患者では,身体機能の低下や他疾患の併存が多くみられることから,全人的ながん医療が求められる.当院は松江圏域唯一の緩和ケア病棟を有し,内視鏡手術をはじめとする低侵襲手術や放射線治療など高齢者にも優しいがん医療を提供している.また,公的病院として,緩和ケアをはじめとしてリンパ浮腫外来,スキンケア外来,がん患者サロン,がん相談などの不採算部門を担当する責務がある.外来治療やケアを主体としたがんセンターを設立することにより,地域完結型のがん治療の推進が期待される.当院の役割をさらに明確にして,病院機能の充実強化,他医療機関との連携を進め,より質の高い医療を提供することにより,地域医療への貢献を果していきたい.