抄録
【目的】心不全入院患者の再入院に影響する因子と,当院における多職種介入の効果を明らかにすること.【方法】当院に入院した心不全患者のうち退院後も追跡可能であった304 例を対象とした.1 年以内の心不全再入院の有無により再入院群,非再入院群,多職種介入の有無により介入群,非介入群に分類し,2 群間の比較を行った.また1 年以内の心不全再入院をエンドポイントとしLog-rank 検定,Cox 比例ハザード回帰分析を行なった.【結果】再入院群は年齢,薬剤処方率(ACE 阻害薬/ARB,利尿薬,抗アルドステロン利尿薬),重症心不全患者(NYHA Ⅲ・Ⅳ)率が有意に高かった.多職種介入率(49.0 % vs 77.7 %,p < 0.001),至適活動量指導率(31.6 % vs 44.2 %,p=0.046),指導した至適活動量(2.9±0.9 vs 3.3±1.1,p=0.040)は再入院群で有意に低かった.多職種介入群では,心不全再入院までの日数が有意に長く,1 年以内の心不全再入院率が有意に低く,β遮断薬とトルバプタンの退院時処方率が有意に高く,急性・慢性心不全診療ガイドラインで推奨されている心不全ステージ別の薬物治療に沿った薬物治療実施率(67.5 % vs 49.5 %,p=0.004),至適活動量指導実施率(57.4 % vs 2.1 %,p < 0.001)が有意に高かった.退院時modified Rankin Scale(2-4 vs 2-8,p=0.033)は有意に低かった.Log-rank 検定の結果,多職種介入(p < 0.001)や至適活動量指導(p=0.035)は再入院を有意に回避した.Cox比例ハザード回帰分析では,多職種介入の有無(HR 0.28,p < 0.001),年齢(HR 1.03,p=0.030),NYHA Ⅲ・Ⅳの重症心不全(HR 1.67,p=0.030)が心不全再入院の有意な独立変数であった.【考察】心不全入院患者に対する多職種介入による.退院時薬剤処方の適正化や,退院時のADL 能力や退院時至適活動量の指導実施率の向上が,心不全再入院の回避と関連していた可能性が考えられた.【結語】心不全の再入院は高齢で至適活動量の低い重症心不全で高く,多職種介入は再入院の回避に有効であった.