抄録
本邦では化学療法未治療の根治切除不能または転移性腎細胞癌に対して2018年8月よりイピリムマブ・ニボルマブ併用療法が承認された.当院でイピリムマブ・ニボルマブ併用療法を経験したので報告する.
症例1:54歳,男性,右腎癌cT1bN0M0の診断にて腹腔鏡下右腎摘除術を施行した.病理診断は淡明細胞癌,pT1bであり,その後,経過観察の方針としていた.11ヵ月後の定期画像検査にて局所再発,肝浸潤を認め,イピリムマブ・ニボルマブ併用療法の適応と考えた.イピリムマブ・ニボルマブ併用療法4コース後の評価はPartial Response(PR)であり,その後ニボルマブ単独療法を継続している.現在,ニボルマブ単独療法28コース施行している.有害事象は下痢Grade 2,副腎機能不全Grade2を認めた.
症例2:68歳,女性.左上腕骨骨折にて当院整形外科受診した.その際のCTにて右腎癌を指摘され,左上腕骨骨接合術の骨組織病理で腎癌の骨転移の診断であった.右腎癌cT3aN0M1と診断し,同月,開腹右腎摘除術(副腎合併摘除)を施行した.病理組織診断は淡明細胞癌,pT3aであった.その後,左上腕骨に対して局所放射線30Gy照射し経過観察としていた.10ヵ月後のCT,骨シンチにて新規骨転移巣を認めたため,イピリムマブ・ニボルマブ併用療法の適応と考えた.イピリムマブ・ニボルマブ併用療法4コース後の評価はStable Disease(SD)であり,その後ニボルマブ単独療法を継続している.現在,単独療法に移行し28コース施行している.有害事象は甲状腺機能異常Grade1を認めた.
両症例とも大きな有害事象なく投与可能であった.現在,ニボルマブ単独療法を施行中であり病勢の進行を認めていない.