2020 年 24 巻 1 号 p. 66-72
症例は54歳女性.左乳房充実腺管癌の手術と術後照射50Gyを行い,Doxifluridineの内服を継続,術後1年で胸痛発作のため当科に紹介された.冠動脈造影検査では有意狭窄なく,経過から薬剤誘発の冠れん縮性狭心症と診断し,カルシウム拮抗薬と硝酸薬を開始した.頭痛のため内服中断,胸痛発作にはニトログリセリン舌下を使用していた.2年後に乳がんの再発のためDocetaxel,Capecitabine,5-fluorouracil + Epirubicin + Cyclophosphamide,TS-1が投与された.再発治療4年後にVinorelbineを開始され,その後Eribulin,Denosumabを投与された.再発10年後に胸痛発作が頻回となり再度当科に紹介.冠動脈造影検査では左前下行枝#7から末梢にびまん性に狭窄を認め(99%狭窄),血管拡張薬を選択的に冠注したが改善なく,れん縮ではなく器質的狭窄と診断した.抗血小板薬と十分な冠拡張薬の投与を開始し1週間後に冠動脈形成術を実施した.血管内超音波検査ではびまん性の内膜肥厚が疑われ,バルーン拡張後に薬剤溶出性ステントを留置し,症状は改善,1年後の冠動脈造影では再狭窄は認められなかった.