松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
長期間のがん治療が冠動脈病変進行に関与していたと考えられた症例
古志野 海人山口 直人大嶋 丈史広江 貴美子太田 庸子岡田 清治太田 哲郎
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2020 年 24 巻 1 号 p. 66-72

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抄録

症例は54歳女性.左乳房充実腺管癌の手術と術後照射50Gyを行い,Doxifluridineの内服を継続,術後1年で胸痛発作のため当科に紹介された.冠動脈造影検査では有意狭窄なく,経過から薬剤誘発の冠れん縮性狭心症と診断し,カルシウム拮抗薬と硝酸薬を開始した.頭痛のため内服中断,胸痛発作にはニトログリセリン舌下を使用していた.2年後に乳がんの再発のためDocetaxel,Capecitabine,5-fluorouracil + Epirubicin + Cyclophosphamide,TS-1が投与された.再発治療4年後にVinorelbineを開始され,その後Eribulin,Denosumabを投与された.再発10年後に胸痛発作が頻回となり再度当科に紹介.冠動脈造影検査では左前下行枝#7から末梢にびまん性に狭窄を認め(99%狭窄),血管拡張薬を選択的に冠注したが改善なく,れん縮ではなく器質的狭窄と診断した.抗血小板薬と十分な冠拡張薬の投与を開始し1週間後に冠動脈形成術を実施した.血管内超音波検査ではびまん性の内膜肥厚が疑われ,バルーン拡張後に薬剤溶出性ステントを留置し,症状は改善,1年後の冠動脈造影では再狭窄は認められなかった.

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