症例は34歳男性.動悸,胸部不快感を主訴にかかりつけ医を受診し,収縮期雑音を指摘された.精査目的で当院受診し,心エコー図検査でBarlow's syndrome類似の僧帽弁逸脱による僧帽弁逆流と,global longitudinal strain(GLS)の低下を認めた(GLS:-15.1%).身体所見から先端巨大症を疑い,頭部MRI,内分泌学的検査から下垂体腫瘍による先端巨大症,TSH不適切分泌症候群と診断された.下垂体腫瘍摘出術を実施.ソマトスタチンアナログ製剤投与の術後2ヵ月の心エコー図検査はGLS -15.5%,術後5ヵ月ではGLS -20.1%と改善傾向を示した.僧帽弁の形態変化と僧帽弁逆流は術後5ヵ月の心エコー図検査では進行なく経過していた. 先端巨大症では成長ホルモン(growth hormone:GH),ソマトメジンC(insulin-like growth factor-1:IGF-1)の過剰分泌による心筋障害,弁膜症の合併を疑う必要があり,その評価に心エコー図検査は必須である.また先端巨大症の治療経過とともに心合併症についても長期的な経過観察が必要である.