抄録
目的:心肺運動負荷試験(Cardiopulmonary exercise testing;CPX)は心不全患者の至適活動量を明らかにして運動指導をするために有用であるが,患者個々の日常生活に応じて適切な活動量について説明し,患者や家族の十分な理解を得ることは容易ではない.CPXの結果をもとに個別に対応できる運動指導患者説明用紙を作成し,この説明用紙が運動指導を実施する医療者と指導を受ける患者のニーズに対応しているかを検討することが本研究の目的である.
方法:説明用紙には,嫌気性代謝閾値(Anaerobic threshold;AT)を「心臓に負担のかからない活動量」,最大酸素摂取量(Peak oxygen consumption;Peak VO2)を「体力」,運動時換気効率(Minute ventilation vs.carbon dioxide output slope: VE vs.VCO2 slope)を「息切れのしやすさ」とした.心肺機能はPeak VO2またはATをもとに基準値の80 %以上を正常,80~60 %をやや低下,60~40 %を低下,40 %未満をとても低下とした.息切れはVE vs.VCO2 slope 34.0を境に「あり/なし」とし,ATレベルの心拍数を記載した.活動量は代謝当量(Metabolic equivalents;METs)で,3.0METsに線を引き,日常生活の目安として認識できるようにした.説明用紙の有用性を検討するため「患者指導に役立つCPX項目(心肺機能・息切れ・心拍数・活動量)」と「患者説明用紙に取り入れてほしい活動内容」についてアンケート調査を実施した.
結果:CPX項目については,心臓に負担のかからない活動量への関心が1番高く,看護師と患者は心肺機能,理学療法士は心拍数に対して関心が高い傾向がみられた.また活動内容については,室内での生活に必要な活動への関心が高かった.
結語:CPXの結果を反映した説明用紙を作成し,アンケート調査結果を参考に改訂した.理学療法士,看護師,患者ともに「心臓に負担がかからない活動量」に関心を持っていたが,心リハを行いながら生活指導を行っている理学療法士は心拍数を運動強度の重要な指標のひとつとして認識していた.今後はセルフアセスメントという観点からも看護師,患者と共にチーム医療として心拍数をもとにした心リハや生活指導について取り組んでいく必要がある.