抄録
77歳女.上腹部痛を主訴とした.各種画像診断により,多発性肝腫瘤と胆管,膵管の拡張を伴った膵頭部腫瘤を認めた.内視鏡検査では,Vater乳頭部の口側部に発赤した隆起があり,生検でカルチノイドと診断した.治療は動注化学療法と肝動脈塞栓術を施行したが,約1年の経過で黄疸が進行し,肝不全で死亡した.病理解剖所見では,十二指腸乳頭部から膵頭部に腫瘍があり,主膵管と総肝管に浸潤し,両管ともほぼ閉塞していた.組織学的には,小型で軽度の多形性の核と好酸性の胞体を持つ細胞が索状に管腔を形成し,増殖するカルチノイド腫瘍であった.肝臓は,最大径6.5cmの中心部が壊死に陥った転移結節を10個認めた.組織学的には,原発巣と同様な所見であった.十二指腸乳頭部カルチノイドは,本邦での報告例は稀で,60例にすぎない.本例の臨床経過と病理解剖所見を60例の臨床的特徴のまとめと共に報告した