抄録
63歳男.口底癌にて腫瘍切除術,右側頸部郭清術,左顎下リンパ節摘出術及び腹直筋皮弁による再建術を施行した.その後,左中頸部リンパ節に転移を認めたため,左頸部郭清術を施行した.更にその後,右上顎前歯部唇側歯肉に有茎性腫瘤が生じ徐々に増大し,右上顎前歯に咬合痛を認めた.デンタルX線写真,パノラマX線写真にて右上顎前歯歯根部にび漫性骨吸収像を認めた.有茎性腫瘤局所麻酔下に健常組織を含めた拡大切除を施行した.切除した腫瘤の割面所見では壊死巣はなく充実性で,創部は完全に上皮化し正常組織にて被覆された.病理組織学的診断の結果,T-cell Lymphomaであった.CT写真,シンチグラフ,エコーにて上顎前歯部歯肉に原発したPeripheral T-cell Lymphomaの確定診断にいたり,CHOP療法を2週間ごとに3クール施行した.放射線治療終了後,口内炎は改善し,現在,再発はみられていない