抄録
77歳女.主訴は進行する嗄声.胸部造影CT所見で弓部大動脈に瘤化した限局性解離があり,一部に血栓を認めた.最大径は5cmで,内膜の石灰化が著明であった.胸骨正中切開で心嚢を切開し,上行大動脈送血,上下大静脈脱血で手術を開始した.術後,脳障害なく覚醒し,翌朝には人工呼吸から離脱し抜管した.第7病日迄には順調に解熱し,白血球数は高値であったが,CRPは減少していた.第19病日からは血清総蛋白値,アルブミン値,カリウム値が減少し,胸部X線写真で左胸水の著明な増加を認めた.胸部CTでは人工血管に連なる被包化された胸水を認め,グラフト感染によるものかは判定できなかった.ドレイン留置のため予防的抗生剤使用を継続した.また,抗炎症薬(aspirin)を開始した.CRPは42病日に正常化しリハビリの後,術後76日目に独歩退院した.退院時の胸部CTでは胸水は完全に消失していた