抄録
11歳男児.発熱,咳嗽,嘔気を主訴とした.ペットを飼っており,患児の弟がマイコプラズマ(Mp)肺炎で入院加療した家族歴,胸部レントゲン検査の肺炎像,および臨床像から,Mp肺炎を疑った.Mpに有効とされる抗菌薬の投与を開始したが症状の改善はみられず,種々の抗菌薬へ変更し,血液検査の改善および下熱傾向がみられたのは入院11日目(第13病日)であった.入院時(第3病日)のイムノカード法によるMp(IGM)抗体迅速検査は陰性であったが,入院9日目(第11病日)には微粒子凝集反応によるMp抗体価は2560倍と著明な上昇を示し,Mp肺炎と確定診断し得た.Mp肺炎にはMpに有効な抗菌薬の早期投与が効果的であるが,臨床上有効ではない症例も存在する.本症例では,Mp自身による直接障害以外に宿主の免疫学的反応による影響も考えられた.