抄録
49歳男.心窩部から背部にかけての疼痛が出現し,他院での腹部超音波検査で膵頭部に3cm大の腫瘍と多発性肝腫瘍を指摘された.諸検査を行い,AFTは高値(823.8ng/ml),肝腫瘍はhypervascularであり,膵腫瘍はCT arteriographyで軽度濃染されるなど非典型的ではあったが,膵癌およびその肝転移と考えた.Gemcitabineは無効であり,フルオロウラシルとシスプラチンに変更したところ,触診上,腹部腫瘍は著明に縮小し,重篤な副作用も出現しなかった.その後,肝不全,汎発性血管内凝固症候群を併発し,治療開始から約10ヵ月で死亡した.病理解剖では,癌細胞は胞巣を形成して増殖していた.HE染色では明瞭な核小体を有する円形の核と好酸性の細胞質を認め,proteinase inhibitor陽性であった.血清AFPが高値で血流豊富な膵腫瘍症例を診た場合,AFP産生膵腺房細胞癌を疑って病理学的に確定診断する必要があると思われた.