松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
9 巻, 1 号
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  • 野津 長, 松井 泰樹, 芦田 泰之, 白谷 卓, 米田 弘子
    2005 年 9 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル オープンアクセス
    from PWV/ABIを用い,腹部大動脈瘤が末梢循環に及ぼしている影響を定量的に検討した.2002年11月~2004年8月に手術を受け,術前にfrom PWV/ABI検査ができた8例の腹部大動脈瘤患者を対象とした.術後のbrachial-ankle pulse wave velocity(PWV)の平均値は,左右下肢ともに術前より有意に上昇した.Ankle brachial pressure index平均値には,術前後に有意な変化はみられなかった.以上より,動脈瘤が動脈硬化症の終末期形態を表すとともに,最期の緩衝地帯として成立するのではないかと推論された.また,術後は何らかの方法でPWVを下げて末梢動脈を保護する必要があると考えられた.
  • 村井 紀彦, 小田 直治, 堀 郁子, 謝花 正信, 藤原 三津子
    2005 年 9 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル オープンアクセス
    平成14年度に著者らが取り扱っためまい症例のうち,簡易的手動振子様回転刺激による前庭眼反射とその固視抑制検査,および頭部MRI検査を施行した109例を対象にして,暗所での前庭眼反射ゲイン,固視抑制下の前庭眼反射ゲイン,固視抑制率が,MRIで描出される大脳の虚血性病変の有無によって影響をうけるかをレトロスペクティブに検討した.その結果,前庭眼反射ゲインは大脳虚血像の有無による群間の違いは認められなかったが,固視抑制下の前庭眼反射ゲインは大脳虚血像を有する群において有意に上昇しており,固視抑制率は大脳虚血像を有する群において有意に低下していた.大脳虚血像を有する群の平均年齢が有しない群よりも有意に高かったため,加齢による機能低下の可能性は否定できないが,小脳,橋以外の脳虚血による前庭眼反射固視抑制率低下は従来考えられてきた以上に多くの症例で存在する可能性が示唆された.
  • 曽根 啓司, 中村 浩人, 生田 浩司, 南京 貴広, 実重 英明, 石原 修二
    2005 年 9 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル オープンアクセス
    術者の被曝低減のため,腹部領域のinterventional radiologyにおける血管造影装置の空間線量分布状況を検討した.オーバーチューブ方式では術者の頭部,アンダーチューブ方式では術者の腹部,生殖腺で被曝が多くなり,image-intensifierをできるだけ患者に近づけることで術者被曝を抑えることができた.放射線防護のための基本三原則に加え,これらのことを考慮することで,被曝量は低減できると思われた.
  • 植木 麻友, 鳥谷 悟, 福田 恵美子, 三谷 佳子, 嘉本 文夫, 卜蔵 充郞
    2005 年 9 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル オープンアクセス
    全自動電気化学発光装置「ECLusys 2010」を用い,電気化学発光免疫測定法で血中サイログロブリン(Tg)の迅速測定を試みた.再現性は同時・日差再現性とも良好であった.希釈試験では,測定可能範囲(1000ng/ml)で直線性が得られ,共存物質の影響も認められなかった.ラジオイムノアッセイ法との間に良好な相関関係が認められた.ECLusys 2010による血中Tg測定は2種類のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ法で,操作も簡便である.血清量も微量(20μl)で,反応時間も18分と早い.診察前検査として甲状腺疾患の診断および経過観察に有用であると思われた.
  • 永島 早苗, 岩倉 良子, 真壁 法子, 渡部 ひとみ, 野々村 美穂, 古賀 美紀
    2005 年 9 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/21
    ジャーナル オープンアクセス
    小豆を用いて冷めても不快感や重たさを感じない安定性のある温罨法を作製し,快適性および持続性を検討した.対象は健常男女40例で無作為に小豆パック群20例とバスタオル群20例の2群に分けた.従来のバスタオルを利用した温罨法に比べ,小豆を使ったものは皮膚温,快適性,重量感において勝っていた.終末期の患者,腹部膨満感のある患者には小豆を使った温罨法が適しているが,加熱時間や貼付部位の考慮が必要と思われた.
  • 2005 年 9 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ロタウイルス胃腸炎の臨床像について検討した.対象は,2003年1月~2004年6月に便ロタウイルス抗原陽性を確認した小児の入院症例57例とした.1歳代が27例(47.4%)と最も多く,入院月は2003年,2004年ともに3月,4月にピークを認めた.経過中にみられた主な症状は,全例に下痢を認め,嘔吐93.0%,発熱89.5%が続いた.重篤な合併症をきたした例はなかった.血液検査では,白血球数やC反応性タンパクの変化は軽微であった.グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼは,グルタミン酸ピルビン酢酸トランスアミナーゼよりも優位に上昇していた.尿素窒素は年齢に対して高値を示すものが多かった.クレアチンキナーゼ(CK)高値の症例にCKアイソザイム検査を行ったところ,MM分画陰極側にextrabandが5~19%の割合でみられ,ミトコンドリアCKと考えられた.
  • 森 浩一, 安部 睦美, 豊嶋 浩之, 徳永 紗織, 山本 慶子, 千葉 純子, 竹田 園子, 舟木 裕子
    2005 年 9 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    手術室におけるクリニカルパス(CP)を作成し,記載状況を調査した.未記入率は,術後,主治医,サイン,バリアンスで高いことがわかった.記載漏れがなくなるようCPを改善し,主治医を含めたスタッフへの啓蒙,バリアンスを理解させることが重要であると思われた.
  • 阿武 雄一, 坂本 誠, 佐々木 亮, 謝花 正信, 辰巳 春環
    2005 年 9 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/22
    ジャーナル オープンアクセス
    68歳男.両下肢脱力および疼痛,左下腿の疼痛が出現し,複数の医療機関で精査を行なったが原因不明であり,当院入院時は両下肢の弛緩性麻痺と高度の神経因性膀胱を認めた.造影MRI,脊髄動脈撮影で脊髄硬膜動静脈瘻(SDAVF)と診断し,椎弓切除を行った.術後著明な変化はみられなかったが,リハビリテーションにより両下肢脱力および神経因性膀胱は徐々に回復し,術後4ヵ月で杖歩行可能となった.
  • 三島 優子, 小林 淳子, 山田 稔, 前田 佐登子, 森沢 剛, 河野 通盛, 吉村 禎二, 原田 祐治, 泉 明夫
    2005 年 9 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    49歳男.心窩部から背部にかけての疼痛が出現し,他院での腹部超音波検査で膵頭部に3cm大の腫瘍と多発性肝腫瘍を指摘された.諸検査を行い,AFTは高値(823.8ng/ml),肝腫瘍はhypervascularであり,膵腫瘍はCT arteriographyで軽度濃染されるなど非典型的ではあったが,膵癌およびその肝転移と考えた.Gemcitabineは無効であり,フルオロウラシルとシスプラチンに変更したところ,触診上,腹部腫瘍は著明に縮小し,重篤な副作用も出現しなかった.その後,肝不全,汎発性血管内凝固症候群を併発し,治療開始から約10ヵ月で死亡した.病理解剖では,癌細胞は胞巣を形成して増殖していた.HE染色では明瞭な核小体を有する円形の核と好酸性の細胞質を認め,proteinase inhibitor陽性であった.血清AFPが高値で血流豊富な膵腫瘍症例を診た場合,AFP産生膵腺房細胞癌を疑って病理学的に確定診断する必要があると思われた.
  • 美野 陽一, 福永 真紀, 田中 雄二
    2005 年 9 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    11歳男児.発熱,咳嗽,嘔気を主訴とした.ペットを飼っており,患児の弟がマイコプラズマ(Mp)肺炎で入院加療した家族歴,胸部レントゲン検査の肺炎像,および臨床像から,Mp肺炎を疑った.Mpに有効とされる抗菌薬の投与を開始したが症状の改善はみられず,種々の抗菌薬へ変更し,血液検査の改善および下熱傾向がみられたのは入院11日目(第13病日)であった.入院時(第3病日)のイムノカード法によるMp(IGM)抗体迅速検査は陰性であったが,入院9日目(第11病日)には微粒子凝集反応によるMp抗体価は2560倍と著明な上昇を示し,Mp肺炎と確定診断し得た.Mp肺炎にはMpに有効な抗菌薬の早期投与が効果的であるが,臨床上有効ではない症例も存在する.本症例では,Mp自身による直接障害以外に宿主の免疫学的反応による影響も考えられた.
  • 石倉 信造, 多賀 智治, 田中 宗亮
    2005 年 9 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    頭頸部扁平上皮癌症例2例に対し,腫瘍切除後に橈側前腕皮弁による再建を行い,採取部の再建には外側大腿皮弁をflow-throug型皮弁として用いた.手指の運動障害はほとんどなく,皮膚,口腔,および前腕の審美性は優れており,皮弁および下肢の血行も良好であった
  • 黄 静, 栗岡 聡一
    2005 年 9 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    21歳女.吐気,嘔吐,飲水時の動悸を主訴とした.本症例は1ヵ月前から口渇,多飲,多尿があり,1ヵ月で8kgの体重減少があった.検査所見では比較的長時間の高血糖状態が示唆され,内因性インスリン分泌能は比較的保たれていた.Anti-glutamic acid decarboxylase antibodyは1480.0U/mlであった.甲状腺機能は亢進状態であった.1型糖尿病(Latent autoimmune diabetes in adult)とバセドウ病の合併と診断し,糖尿病性ケトアシドーシス・バセドウ病治療により甲状腺ホルモンは低下傾向を認め,それに伴い血糖値も急速に低下した.バセドウ病の合併により耐糖能が急激に悪化し,糖尿病性ケトアシドーシスを発症したと考えられた.短期間で体重減少が認められた糖尿病では,甲状腺機能を検査すべきであると思われた.
  • 堀 郁子, 小川 洋史, 篠原 祐樹, 謝花 正信, 金山 博友
    2005 年 9 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/24
    ジャーナル オープンアクセス
    イレウス状態で手術されたの傍十二指腸ヘルニア症例を報告し,入院7ヵ月前のCTを検討した.56歳女.4~5年前より食後に腹痛があり,7ヵ月前に腹痛の検査を行ったが,原因は特定できなかった.今回,次第に増強する腹痛が出現し,腹部単純写真で左上腹部に拡張した腸管ガス像がみられ,椎体右側には腸管ガスは認めなかった.CTでは,十二指腸下行脚は確認できるが水平脚は認められず,右腎腹側に拡張した小腸係蹄が右に凸に平行し,上行結腸を外側に圧迫していた.上腸管膜静脈は,膵の高さでは上腸管膜動脈の右にあり,下方になるにつれ上腸管膜動脈の腹側から左に時計回りに移行していた.傍十二指腸ヘルニアによるイレウスと診断した.急性腹症発症以前のCTを再検討したところ,腸管の走行異常を確認した.傍十二指腸ヘルニアは,症状が軽微な時期にも小腸が嚢内を走行している可能性があり,日常的な腹痛に対するCT読影の際には小腸の走行を確認する必要があると思われた
  • 白谷 卓, 野津 長, 芦田 泰之, 松井 泰樹, 吉田 学
    2005 年 9 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル オープンアクセス
    62歳男.膀胱癌手術後経過観察の胸部CTで,甲状腺右葉に嚢胞および腫瘍性病変を指摘された.高カルシウム(Ca)血症,低リン(P)血症,骨塩量の低下を認め,intact-副甲状腺ホルモン(PTH)は76pg/mlであった.頸部超音波検査,テクネチウム99mMIBIシンチグラフィー,頸部単純CTにより,甲状腺右葉下極に存在する腫瘍が原因の原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT),および甲状腺嚢胞性病変と診断し,腫瘍核出術を行った.病理標本はparathyroidal neoplasmの所見であり,副甲状腺腺腫と診断された.術後は良好に経過し,血清Ca,血清P,intact-PTHとも正常範囲内で安定した.なお,本症例には骨痛などの自覚症状はなかったが,骨粗鬆症の診断でカルシウム剤の内服治療が行われていた.
  • 野津 長, 松井 泰樹, 白谷 卓, 芦田 泰之, 吉田 学
    2005 年 9 巻 1 号 p. 79-81
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル オープンアクセス
    59歳女.甲状腺癌術後経過観察中に血中サイログロブリン値の上昇を認めた.頸部に明らかな腫瘍再発はみられず,遠隔転移再発を疑い単純CTを行ったところ,偶然,左S10に異常陰影を認めた.原発性肺癌を疑い,胸腔鏡下に左S10を部分切除した.病理診断は細気管支肺胞上皮癌であった.肺重複癌の発見にはCTが有効であると思われた.
  • 王 文昌, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友, 井上 淳
    2005 年 9 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル オープンアクセス
    41歳男.右下腹部に軽度の圧痛と膨隆を認めた.白血球数93×10^2/μl,C反応性タンパク9.4mg/dl,癌胎児性抗原(CEA)1.8ng/mlで,CTで右下腹部から右側腹部,正中へと続く腫瘤病変を認めた.開腹すると,虫垂周囲にはゼリー様粘液物質を認め,更にダグラス窩と大網にも同様のゼリー様物質を認め,大網は腫瘤を形成していた.回盲部切除,大網切除術を行い,切除後は生理食塩水による腹腔内洗浄と閉腹時にマイトマイシン C(MMC)腹腔内投与を行い,術後にはフルオロウラシル内服とMMC静注を行った.病理組織所見で,虫垂内腔に乳頭線管状に増生する高分化腺癌を認めた.術後経過は良好であったが,術後5年目現在,術後から認めていた少量の偽粘液腫を腹腔全体に認めるようになった.CEAの上昇もみられ,再手術を考慮中である.
  • 河野 菊弘, 王 文昌, 倉吉 和夫, 吉岡 宏, 金山 博友, 井上 淳
    2005 年 9 巻 1 号 p. 87-89
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/26
    ジャーナル オープンアクセス
    62歳女.8日前に義歯を誤嚥し,自然排出を期待したが義歯の移動はみられず,当初は無症状であったが,左下腹部痛を訴えるようになった.大腸内視鏡検査でS状結腸粘膜に嵌入した義歯を認め,周囲粘膜に浮腫,潰瘍形成がみられた.開腹するとS状結腸SD部に浮腫を認め,触診で義歯を確認した.結腸を約10cm切除して閉腹した.腸管の穿孔は認めなかった.術後経過は良好で,義歯が腸管穿孔する前に腸切除できたことが良好な術後経過につながったものと考えられた.
  • 北山 朋宏, 渡邊 愛, 黒崎 あゆな
    2005 年 9 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/26
    ジャーナル オープンアクセス
    86歳女.左肘頭骨折術後に約半月のギプス固定を行った.ギプス除去後に後拘縮が出現し,ADL制限を来たした.以前のADL動作能力獲得,関節可動域(ROM)改善を目的に認知運動療法を導入したところ,ほとんど痛みを伴わずに治療効果が得られた.認知運動療法はセラピストと患者との密な関わりが必要であり,時間の制約が施行のハードルとなるが,痛みに対して過敏に反応する患者にとっては有効であると思われた.
  • 西 紫
    2005 年 9 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2005年
    公開日: 2019/08/26
    ジャーナル オープンアクセス
    末期のがん患者16例に音楽療法を行った.15例に良好な結果がみられ,そのうち顕著な形で効果が現れた2例を報告した.音楽療法の有効性についてのエビデンスは確立していないが,酸素飽和度の改善や意識レベルの低下した患者にもある種の意欲を引き出すことなど,QOLの向上を示唆する結果が得られた
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