廃棄物資源循環学会誌
Online ISSN : 2187-4808
Print ISSN : 1883-5864
ISSN-L : 1883-5864
特集:生体異物の代謝から見通す化学物質との共存と棲み分け
薬毒物代謝酵素と環境汚染物質の代謝活性化
中尾 晃幸
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 30 巻 3 号 p. 186-193

詳細
抄録

われわれの身の回りには数百~数千種類もの化学物質が存在し,米国ケミカルアブストラクトサービス (CAS) への登録数も 1 億 4 千万種類を超えている。それぞれの化学物質の毒性は,一般毒性試験により評価され,そこから導かれる半数致死量 (LD50) や無毒性量 (NOAEL) の数値を比較して毒性の強弱を判断している。環境や食品中に存在する環境汚染物質は,種々の経路から生体内に取り込まれる。多くの化学物質は生体内に取り込まれた後,吸収,分布,代謝過程で解毒され,速やかに体外へ排泄される。しかし,一部の環境汚染物質は,主に肝臓に存在する Cytochrome P450 (P450) により代謝活性化を受け,親化合物より毒性が強くなる代謝物へと変換される。本稿では,毒性試験法の概要と代謝にかかわる P450 について包括的に整理した。さらに,環境汚染物質が代謝活性化を示す一例をあげ,代謝物の毒性評価の重要性を指摘した。

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
前の記事 次の記事
feedback
Top