2023 年 34 巻 3 号 p. 147-157
ファッション製品はすべての人が幸福で豊かな生活をする上で欠かせない製品であるが,多品種の製品が大量に生産され,廃棄されている。サステイナブル・ファッションへの取り組みは多く提案されているが,社会実装には至っていない。その結果として,原料から廃棄・リサイクルのライフサイクルにおいて,多くの課題が指摘されている。ステークホルダーワークショップとリサイクル技術や社会制度の調査結果をもとに,サステイナビリティ,特に資源循環に向けた社会実装課題を抽出した。その中から「回収のための社会の仕組み作り」と「消費者の認知と行動変容」が喫緊の課題と指摘し,サステイナブル・ファッションに向けた展望を示す。法制度上の位置づけが十分でないことは大きな課題であるが,ファッション産業が消費者・行政・研究者と協力しながら,繊維・衣服製品の資源循環が行われる社会システムの確立に向けて自ら行動することが重要である。