廃棄物資源循環学会誌
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34 巻, 3 号
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巻頭言
特集:ファッションと循環経済
  • 平尾 雅彦
    2023 年 34 巻 3 号 p. 147-157
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2024/02/06
    ジャーナル 認証あり

    ファッション製品はすべての人が幸福で豊かな生活をする上で欠かせない製品であるが,多品種の製品が大量に生産され,廃棄されている。サステイナブル・ファッションへの取り組みは多く提案されているが,社会実装には至っていない。その結果として,原料から廃棄・リサイクルのライフサイクルにおいて,多くの課題が指摘されている。ステークホルダーワークショップとリサイクル技術や社会制度の調査結果をもとに,サステイナビリティ,特に資源循環に向けた社会実装課題を抽出した。その中から「回収のための社会の仕組み作り」と「消費者の認知と行動変容」が喫緊の課題と指摘し,サステイナブル・ファッションに向けた展望を示す。法制度上の位置づけが十分でないことは大きな課題であるが,ファッション産業が消費者・行政・研究者と協力しながら,繊維・衣服製品の資源循環が行われる社会システムの確立に向けて自ら行動することが重要である。

  • 岡野 隆宏
    2023 年 34 巻 3 号 p. 158-167
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2024/02/06
    ジャーナル 認証あり

    国際的な課題となっているファッションの環境への影響について明らかにするとともに,衣類の再利用の現状と課題を整理し,サステナブルファッションの実現に向けた生活者と企業のアクションを提示した。日本においては,供給量の9 割に相当する衣類が1 年間に手放され,その7割近くが再利用されずに廃棄されている。従来からさらなる衣類の再利用は行われてきたが,中古衣料・ウエス・再生資材(反毛材料) のいずれも需要が減少し,回収量の増加は難しいのが現状である。新たな再利用として繊維から繊維へのリサイクルが期待されているが,現状では課題も多く,選別技術とリサイクル技術の高度化と易リサイクル設計等の環境配慮設計が必要である。このため,環境省では,長く大切に着る,リユースを楽しむ,先のことを考えて買う,作られ方をしっかり見る,服を資源として再生利用する,という5つのアクションを生活者と企業の双方に呼びかけている。

  • 矢野 順也, 衣川 佳輝, 小柴 絢一郎, 浅利 美鈴, 平井 康宏, 酒井 伸一
    2023 年 34 巻 3 号 p. 168-177
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2024/02/06
    ジャーナル 認証あり

    繊維製品の持続性・循環を考えるうえで繊維製品の由来や素性(素材情報等) に関する情報の重要性が高まってきた。本論文では,京都市における家庭ごみ細組成調査を元に,家庭系燃やすごみ中の繊維類の排出実態を整理した。湿重量割合は1981 年の調査開始以降,増減を繰り返し推移してきており,2017~2021 年平均では燃やすごみの約6.2 %を占める。一方で,2021 年度の細分類項目組成結果では,商品57.5 %,使い捨て商品20.5 %,事業所由来9.2 %,その他12.8 %となり,不織布マスクが6.8 %を占めたことで使い捨て商品の割合が増加するなどの変化がみられた。また,2021 年度の繊維素材組成は合成繊維49.6 %,再生繊維0.4 %,天然繊維49.9 %であり,合成繊維の割合は1994 年度25.6 %と比べて上昇傾向にあることも明らかになった。こうした知見を活用しつつ,今後の繊維製品・繊維廃棄物の循環に係る対策や政策を検討していくことが求められる。

  • 田中 周平, 嶋谷 宗太
    2023 年 34 巻 3 号 p. 178-182
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2024/02/06
    ジャーナル 認証あり

    近年,マイクロプラスチック(MPs) による水環境の汚染が報告されており,世界的に規制やルール作りが本格化している。生活排水に着目すると洗顔料や化粧品由来のMPs,洗濯による衣類由来の化学繊維片,繊維状MPsが排水に含まれると予想される。洗濯排水中の繊維状MPsを定量的に実験した結果,1人1日あたり繊維状MPsの排出量(重量) は,洗濯1, 5, 10, 15, 20回目の平均値で,パルセータ型で46.2 mg/(人・日),ドラム型で210 mg/(人・日) であった。同様に, 1人1日あたり繊維状マイクロプラスチックの排出量(本数) はパルセータ型で394,000 本/(人・日),ドラム型で2,180,000 本/(人・日) であった。重量,本数ともにドラム型洗濯機からの排出量がパルセータ型よりも多かった。また,洗濯回数の増加に伴い,排出される繊維が短くなる傾向が観察された。乾燥器による繊維の劣化や,たたき洗いによる物理的衝撃の影響で,繊維の微小化が特にドラム型洗濯機で起こっていることが示唆された。

  • 仲村 和代
    2023 年 34 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2024/02/06
    ジャーナル 認証あり

    グローバル企業が手がける安い衣料品が大量に出回るようになった反動で,衣料品の大量廃棄が問題になっている。消費者が短いサイクルで買い替え,古着として廃棄やリサイクルに出されるものに加え,アパレル企業がコスト削減のために労働力の安い国に大量発注し,余って廃棄されるものもあり,その数は10 億点に及ぶとも指摘される。環境への負荷が大きいだけでなく,長時間労働・低賃金で働かされる途上国の労働者の労働環境の問題もある。

  • ―― 欧州の施策を中心に――
    粟生木 千佳
    2023 年 34 巻 3 号 p. 189-197
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2024/02/06
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,EUエコデザイン規則案,テキスタイル戦略やフランス,オランダ等のテキスタイル資源循環に関連する取り組み,民間セクターのテキスタイルの環境配慮に関する各種イニチアチブの概要を取りまとめ,最近のテキスタイルと循環経済にまつわる関連国際動向について議論した。

     政策の大きな方向性としては,デジタル製品パスポートや消費者への情報開示の動きに加えて,製品製造におけるリサイクル可能性に加え,耐久性や修理可能性の強化,原材料におけるリサイクル材・持続可能な素材の採用,それら実現のためのEPR (拡大生産者責任) スキーム強化等があげられる。

     国内においても,これらの動向を注視しつつ,環経済観点からの材料開発や技術・事業の展開,回収体制の構築の検討や,テキスタイル分野の持続可能性向上に向け,今後の効率的効果的な循環への製造事業者の関与の在り方や,小売業,自治体等,各種主体の役割の整理等を進めていく必要があろう。

  • 鎌田 安里紗
    2023 年 34 巻 3 号 p. 198-204
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2024/02/06
    ジャーナル 認証あり

    衣食住という言葉に表されるように,衣服は人の生活の基礎を成している。同時に,装うことは日々の生活に彩りを与えてくれる。しかし,その衣服の生産から廃棄・循環までの過程では,自然と社会に多大な負荷を与えているとされている。この課題に対して,各国で法整備や技術開発が進められている。本稿では,国内外のサステナブルファッションに関する企業間連携,技術開発,情報発信の取り組みについて事例を紹介する。また,消費者への働きかけの取り組みについても触れ,サステナブルファッションの推進に向けて,企業・消費者・行政の望ましい連携の形を考察する。

  • ―― 学校における消費者教育の現状と消費者行動への影響要因を参考に ――
    森 朋子
    2023 年 34 巻 3 号 p. 205-214
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2024/02/06
    ジャーナル フリー

    サステイナブル・ファッションに資する消費者行動を促進するためには学校教育が重要な役割を担うが,サステイナブル・ファッションが現在の学校教育でどのように扱われているのかは,十分な調査が行われていない。また,個人の環境配慮行動には教育以外にもさまざまな状況的,社会的,心理的な要因も影響を及ぼすことがわかっているが,サステイナブル・ファッションに資する消費者行動に着目し,これらの行動への影響要因を整理した研究はほとんどない。本論文では,サステイナブル・ファッション促進に向けて消費者に期待される具体的なアクションを整理したうえで,これらのアクションが最新の学習指導要領や教科書の中でどのように扱われているのかを調査するとともに,既存研究のレビューによって,消費者に期待されるアクションに影響を及ぼす要因を整理した。これらの結果を踏まえ,サステイナブル・ファッションに資する教育の課題と展望を論じる。

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