本稿では,まず,大正関東地震がわが国に与えた真の影響に関して述べる。理由は「巨大災害発生時の災害廃棄物の問題」に関しても影響が大きいからである。そのうえで,災害廃棄物問題を含め,首都直下地震や南海トラフ巨大地震発生に向けた災害対策の課題とその背景を,過去の歴史を踏まえて考察する。重要な点は,事前対策費と違って,復旧・復興費等の事後対策費は,財政措置が難しい中で工面するにもかかわらず,地元に落とすことができない。被災地の能力が求められる対応力に及ばない場合,被災地をスルーして外部に流れるからである。国難級災害といわれる首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生時には,日本をスルーして海外に資金が流出する可能性がある。これを改善するための方策は,質的・量的な対応力の確保と資金の流出を防ぐ意味でとても重要であるが,これが十分に認識されていないことが大きな問題である。