持続可能な開発目標において,狭義のサニテーションに留まらない包括的な生活衛生インフラの実現が,グローバル・イシューとなった。分散型生活衛生インフラの重要性は,農村のみならず,都市における包括的サニテーション(CWIS)イニシアティブの下,都市部においてもメインストリーミング化しつつある。一方,都市衛生サービスの中で主要な温室効果ガス(GHGs)の発生源でもある腐敗槽は,その在り方が問われる。近年では,水・衛生分野の気候レジリエンスの議論も活発化している。これら諸課題に対し,日本のし尿汲取と処理の普及は,短期間で生活衛生改善を実現する社会的なモデルとなる。独自に発達した浄化槽,し尿処理施設等のハードな技術のみならず,ソフトな技術・仕組みも含めた高度な分散型エコシステムは,大きな可能性を有する。災害対応先進国である日本の災害レジリエンスの知見は,気候レジリエンスの分野にも援用しうるであろう。