浄化槽はわが国独自の分散型生活排水処理装置である。微生物の代謝を利用した生物学的処理を主体とし,住宅等から排出される生活排水を浄化し,環境への負荷を軽減している。2023年度末時点で1,177万人が利用している重要な社会インフラであり,下水道とともに汚水処理施設整備の一端を担っている。本報では,分散型のシステムとしての特徴である流入変動や保守点検,清掃等について確認する。さらに,国が構造を定めた構造例示型の浄化槽から,メーカーの独自技術を大臣が認定する性能評価型の浄化槽へと移り変わり,分散型に対応したコンパクト化,高度処理化,省エネ化等の技術が開発されてきた事例を紹介するとともに,消毒や汚泥処理,人口減少社会における維持管理等の今後の展開について所見を述べる。