2015 年 25 巻 4 号 p. 183-188
レンバチニブメシル酸塩(レンバチニブ)はエーザイ筑波研究所にて創製された経口投与可能な受容体チロシンキナーゼを阻害するマルチキナーゼ阻害剤であり、腫瘍血管新生に関わる血管内皮増殖因子受容体VEGFR1~3および線維芽細胞増殖因子受容体FGFR1~4、ならびにがん細胞増殖に関わるRearranged During Transfectionがん原遺伝子RETのチロシンキナーゼ活性を阻害する。レンバチニブはVEGFR2に対して既存のキナーゼ阻害剤とは異なる新規の結合様式(タイプV)で結合する。in vitro血管新生モデルではVEGFおよびFGF誘導の血管新生を阻害し、様々なヒトがん細胞を移植したマウスモデルにおいて投与量依存的な抗腫瘍効果を示した。FGFR過剰発現やRETに遺伝子変異を有する甲状腺がん細胞に対して細胞増殖効果が認められたことから、レンバチニブは、VEGFR、FGFRによる血管新生と、FGFR、RETによる甲状腺がん細胞の異常増殖の両方を阻害することで、抗腫瘍効果を発揮することが示唆された。