2018 年 28 巻 3 号 p. 115-121
ファビピラビルは富山化学工業株式会社で抗インフルエンザウイルス活性を指標に創製された薬剤であり、RNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を選択的に阻害する新規抗ウイルス薬である。その作用機序は細胞内に取り込まれたファビピラビルが細胞内酵素により代謝され、ファビピラビル・リボシル三リン酸体となり、RdRpを選択的に阻害するものである。特記すべきは致命的な出血熱を引き起こすRNAウイルスにも活性を示すことである。RdRpの触媒領域がRNAウイルス間で広く保存されていることが、広範囲なRNAウイルスにin vitroやin vivoで効果を示す現象を支持している。これらの特徴的な抗ウイルス活性を示すファビピラビルは、治療法の確立されていないRNAウイルス感染症薬として期待される。