2012 年 43 巻 3 号 p. 156-170
我が国の公衆衛生学教育は,明治以後の近代化の過程では,新しい国づくりと共に行われた.第2次世界大戦後,アメリカから持ち込まれた公衆衛生と,新憲法の法体系に基づいた幅広い学問分野での公衆衛生学教育が行われたことは,わが国の公衆衛生の普及・発展に大きく貢献した.高度経済成長後は,規制緩和や地方分権の進行もあり,わが国の公衆衛生システムの基本構造はほぼ完成され,世界でも最高度の健康水準を達成した.しかしながら,残された課題と20世紀末からの日本社会の激変・流動化等から生じた諸問題もあり,公衆衛生学教育はより多要因で複雑系となった.21世紀においては,これまでの幅広い教育体制を維持しつつ,集学性の高い公衆衛生大学院等の発展を計り,時代の要請に応える必要がある.