医学教育
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43 巻, 3 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特集
  • 丸井 英二
    2012 年 43 巻 3 号 p. 147-150
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2014/01/09
    ジャーナル フリー
      公衆衛生(学)はpublic health を日本語に翻訳した用語であるが,日本語と英語の意味するところは必ずしも同一ではない.そこには歴史的背景によるズレがある.わが国の医学教育における公衆衛生学の位置づけは,むしろ基礎医学,臨床医学そして「社会医学(social medicine)」として,医学の一部として位置づけられることが望ましい.Public health としての公衆衛生学は医学と並行したかたちで独立した領域として,医学生のみならず広い対象について教育を行うことが,「公衆衛生大学院」において始まっていることは,今後への期待となる.
  • 小林 廉毅
    2012 年 43 巻 3 号 p. 151-155
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2014/01/09
    ジャーナル フリー
      わが国の公衆衛生学教育は,第二次世界大戦後に制定された日本国憲法第25条や医師法をはじめとする医療従事者の資格関連法規に基づく専門教育と,人生の各ステージにおける主要な健康問題や健康づくりを中心とした教養教育を2つの大きな柱として,大学(学部)レベルで行われてきた.また,大学院(博士課程)における公衆衛生学教育は,研究者養成を主目的としており,当該領域を広く体系的に学ぶというカリキュラムではなかった.近年,日本社会は新たな健康・医療問題や種々の環境リスクに直面しており,新たな公衆衛生の専門家教育が求められている.そのニーズに対応するため,海外の公衆衛生大学院をモデルとした専門職大学院課程の設置が進みつつある.
  • 實成 文彦
    2012 年 43 巻 3 号 p. 156-170
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2014/01/09
    ジャーナル フリー
      我が国の公衆衛生学教育は,明治以後の近代化の過程では,新しい国づくりと共に行われた.第2次世界大戦後,アメリカから持ち込まれた公衆衛生と,新憲法の法体系に基づいた幅広い学問分野での公衆衛生学教育が行われたことは,わが国の公衆衛生の普及・発展に大きく貢献した.高度経済成長後は,規制緩和や地方分権の進行もあり,わが国の公衆衛生システムの基本構造はほぼ完成され,世界でも最高度の健康水準を達成した.しかしながら,残された課題と20世紀末からの日本社会の激変・流動化等から生じた諸問題もあり,公衆衛生学教育はより多要因で複雑系となった.21世紀においては,これまでの幅広い教育体制を維持しつつ,集学性の高い公衆衛生大学院等の発展を計り,時代の要請に応える必要がある.
  • 後藤 あや
    2012 年 43 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2014/01/09
    ジャーナル フリー
      米国の公衆衛生教育は歴史的に実務的であり,設置基準に基づく体系的な教育を豊富な教授陣が,医学部とは独立して提供してきた.多様な学生のニーズに対応するために多様なプログラムを用意しており,教育方法も工夫を凝らし,その成果として学生数が着実に増加した.しかし,公衆衛生専門家の数は国全体として決して十分ではなく,実践的な技術と知識が身につくよう,より多くの専門家を育成する改革が続いている.
  • 近藤 正英
    2012 年 43 巻 3 号 p. 177-180
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2014/01/09
    ジャーナル フリー
      Public healthの源流を成す国のひとつであるイギリスにおけるPublic health教育を紹介した.19世紀以来,主として,医師の卒後教育として,行政や国民保健サービス(NHS)での専門担当者の修めるべき教育として行われてきた.1972年以降,NHSでの専門医資格教育としてPublic health consultant(公衆衛生専門医・家)の教育が行われてきているが1990年代末以降は非医療専門職に対して教育と資格が開放されている.近年は高等教育機関での修士課程教育が広まっているが,医師卒前教育の中では今日的な社会的要請に必ずしも応えられていない.
報告
  • 内田 満夫, 津田 洋子, 塚原 照臣, 多田 剛, 櫻井 晃洋, 福嶋 義光, 野見山 哲生
    2012 年 43 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2014/01/09
    ジャーナル フリー
      信州大学医学部3年生を対象に,衛生学公衆衛生学の講義の際にプレテストとポストテストを実施した.本研究は,どちらのテスト結果が期末試験結果と強く関連するか検証することを目的とした.
    1)2010年の前期に,医学部3年生112名を対象としてプレテストとポストテストをそれぞれ合計7回行い,また前期末に期末試験を実施した.
    2)プレテスト,ポストテスト,プレ–ポストテストの差分,期末試験の得点の関連を調べた.またプレテストの結果別に学生を4分位に分け,群間のポストテストと期末試験の得点を比較した.
    3)プレテスト得点は,ポストテスト,期末試験の得点と有意に関連した.また4分位において,第4群(プレ高得点群)は第1群(プレ低得点群)より,ポストテストと期末試験得点が有意に高かった.
    4)ポストテスト得点は期末試験の得点と有意に相関しなかった.
    5)以上より,プレテスト得点はポストテスト得点より期末試験結果を予測するための指標として有用であると考えられた.
  • 黒野 俊介, 伊東 亜紀雄, 長谷川 洋一
    2012 年 43 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2014/01/09
    ジャーナル フリー
      名城大学の薬学部5年生を対象として,薬局と病院で各々11週間ずつ実施する実務実習での学習の修得度(4項目)と実習での不安と疲労(5項目)に関するアンケートを実施した.
    1)実習施設の順序にかかわらず,学生は初回実務実習後には知識,技能,態度,職務の概要・使命の理解が向上したと自己評価しており,初回実務実習での学習が効果的であると考えられた.
    2)実習期間を通じて,学生は指導薬剤師および大学教員からの指導・アドバイスに対して強い不安を感じていないと考えられた.
    3)実習期間を通じて,学生は身体的疲労より精神的疲労を強く感じている.ただし,実習中の疲労は,実習前の予測より低く,薬局実習に比べて病院実習で疲労を強く感じていると考えられた.
教育実践研究
  • 西岡 和昭, 伊藤 正裕, 林 省吾, 平井 宗一, 福沢 嘉孝, 大滝 純司
    2012 年 43 巻 3 号 p. 199-204
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2014/01/09
    ジャーナル フリー
      献体標本を用いて各部位の名称や機能を問う実習試験と一般的な解剖学的知識を問う筆記試験の正答率を比較して解析した.
    1)実習試験の正答率と筆記試験の正答率との相関は弱かった.
    2)実習試験では,通常の筆記試験では測れない能力を評価している可能性が示唆された.
    3)人体の構造の多様性・個体差の要素が含まれる献体を用いた実習試験と解剖学知識を問う筆記試験の併用は,学生を評価する上で有用であることが推測された.
  • 角舘 直樹, 次橋 幸男, 横山 葉子, 山本 洋介, 三品 浩基, 中村 文明, 福森 則男, 竹上 未紗, 大野 慎也, 佐藤 恵子, ...
    2012 年 43 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 2012/06/25
    公開日: 2014/01/09
    ジャーナル フリー
      我が国では臨床研究のデザインから解析までの基礎知識(臨床研究コア・コンピテンシー)を理解する医療者は少ない.我々は,臨床現場で働く多忙な医療者が,臨床研究コア・コンピテンシーを学ぶための対面授業と遠隔学習システムを組み合わせたブレンデッド型遠隔学習プログラムを開発した.今回は,本プログラムの教育効果について報告する.
    1)本プログラム終了から4か月経過時点で,対象者の64%が臨床研究に取り組み始めていた.
    2)本プログラムは,臨床研究について議論できる仲間の数を増やすことにも寄与している可能性が示唆された.
    3)本プログラムは,受講者の臨床研究に対する自信(自己効力感)を高めている可能性が示唆された.
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