医学教育
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特集 : 歩みを止めないウクライナの医学教育-空襲警報の下で
東京に持ち込んだ防災バッグ
オレクサンドラ リアベツ
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2022 年 53 巻 6 号 p. 525-529

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抄録

 「私はウクライナから来ました」と言ったときの受け取られ方は, 昨年と今とではまったく変わったものになってしまった. ウクライナがどこにあるのか知っている人も少ないような国であったのに, 今や, シェフチェンコ記念碑がキエフのどこにあるのか, イジュムがハリコフからどのくらい離れているのかまで知られている. 2022年2月以降に殺害されたウクライナ人の数を考えると, それは決してうれしいことではなく, むしろ世界に知られていないウクライナであってほしかったと思う. ウクライナの医療や教育は, 今, 戦争の影響を強く受けている. 爆発を繰り返し経験しても, 戦争に慣れるということは決してない. しかし, その状況に適応しようと試み, 自分の目標に到達するために必死に頑張ることはできる. いま現在, 安全が守られる日本で, 明るい電気の光の下, 温もりを感じながら勉強できる機会が与えられている自分はとても恵まれていると思う. そして, ここで得た知識やスキルが, これからのウクライナの発展に必要とされると確信しているからこそ, 怒りや痛みをコントロールできていると自覚するのである.

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© 2022 日本医学教育学会
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