医学教育
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53 巻, 6 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
特集 : 歩みを止めないウクライナの医学教育-空襲警報の下で
  • 武田 裕子
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 53 巻 6 号 p. 501
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー
  • ディミトロ レメズ
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 53 巻 6 号 p. 502-511
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー

     ウクライナの医学教育は, 国際標準を満たすものとして確立している. 適切な評価がなされており, 充実した教育・実習プログラムが提供され, 医学生が, 将来, 医師として働くのに必要な知識・技術を自信を持って学べる環境となっている. 他の先進国に比べて授業料が低額なこともあり, ウクライナの医学部には, 中東やアジア, アフリカからも入学している. 卒業生が様々な国で活躍していることも, ウクライナの医学教育が優れた水準にあることを示している.

  • マキシム スクリプニク
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 53 巻 6 号 p. 512-515
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー

     歯科は, ウクライナの医療において最も確立した専門性の高い分野の一つであり, 重要な役割を担っている. ウクライナの歯科医学教育システムは, 欧州や諸外国のカリキュラムに準拠している. 学生は, 高校卒業後に歯学部に入学し, 5年制である. 看護師や歯科技師など, 医療資格を得る教育を受けた入学者は, 4年間で卒業できる. すべての卒業生は, 大学での5年 (または4年) 間の養成課程を修了した後, "歯科医学士" の学位が授与される. この学位は, 修士号と同等である. 歯学部卒業後, 実際に臨床に従事するための資格を得るには, この修士号も取得した上で「総合歯科」研修を修了する必要がある. この資格によって, 一般的な歯科診療への従事が可能となる. さらに専門性の高い複雑な症例の診療に従事するには, 補綴歯科学, 治療歯科学, 小児歯科学, 外科歯科学, 矯正歯科学, 歯周病学, 顎顔面外科学の専門研修を修了する必要がある. しかしながら, ロシアからの大規模侵略がウクライナで始まったとき, すべての質の高い教育システムは一瞬で崩壊してしまった. いくつかの機関は部分的に復旧してきてはいるが, ウクライナの学生や教職員は絶え間ないミサイル攻撃の脅威に曝されながら, 歯学を学び, 教え, 診療している. そのような状況下においても, ウクライナの歯科教育は, 欧州の教育水準を保つべく, 十分な臨床経験と技術の獲得に主眼を置いて提供されている.

  • テチアーナ ハラシェンコ
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 53 巻 6 号 p. 516-520
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー

     プライマリ・ケアとは, 健康上の問題や課題で緊急対応を要しない場合に, 医療システムの中で最初に, そして継続して提供される医療のことを指す. ソビエト社会主義共和国連邦 (USSR) の崩壊後, ウクライナは独立を果たし, より新しいプライマリ・ケア制度への移行を開始した. 長い道のりではあったが, ウクライナは, 現在, 電子医療サービスや新しい設備・機器, プライマリ・ケア医への高い給与など, 最適なプライマリ・ケアを提供する体制を整備している. ウクライナでは, 個々の家庭医は1,800~2,000人の患者を担当し, 診療所で医療を提供している. さらに, 患者のニーズに合わせて遠隔診療も行っている. 戦争は, デジタル化が進んでいたプライマリ・ケアのシステム構築をさらに促進した. それによってウクライナのさまざまな地域において, より適切な医療が提供されている.

  • オルガ トロヤノフスカ
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 53 巻 6 号 p. 521-524
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー

     ウクライナでは, 一人の人間があらゆる面で成長することが, 社会にとっても意味のあることだという考え方に基づいて, 教育を提供している. この目標は, 医学にとどまらず, あらゆる学問分野で共有されている. ウクライナの教育システムの改革は, ボローニャ協定の合意後に実施されたため, 結果としてEUの基準に準拠するものになった. ロシアのウクライナに対する戦争以前は, ウクライナには 14の州立医科大学と5つの私立医科大学があった. これらの医科大学は, あわせて11,177名の教育者を雇用し, そのうち1,816名が教授, 7,096名が准教授あるいは助教であった. 毎年, 医育機関からは, 10,200 名の卒業生が医師として研修を開始している. ウクライナの医科大学で学ぶ医学生には, 155カ国から来ている38,000名の留学生も含まれている. 世界医学教育連盟の基準に則ったウクライナの医師養成の枠組みは, 学士号, 大学院教育, 継続的な専門能力開発の3つのレベルを含む. 欧州連合委員会は, 教育の質を担保する標準的な認証手続きのために, ECTS (European Union Course Credit Transfer System) を設立した.  ロシアのウクライナへの軍事侵攻により, 医学教育も戦争のもたらす状況に対応しなければならなくなった. ウクライナの43の高等教育機関は砲撃や爆撃で被害を受け, 5つの機関は破壊された. COVID-19の経験があったので, 迅速にオンライン教育に切り替えることができた. 現在, 多くのウクライナの高等教育機関の存続が脅かされている. 財源が不足し, インフラが破壊され, 多くの学生や教職員が避難民となって大学を離れているからである. このような状況において, 海外の大学との計画的なパートナーシップは, こうした教育機関の存続に大きな力となる. 順天堂大学によるウクライナ人医師, 学生, 科学者のための奨学金制度は, 医学コミュニティによる支援の一例といえる. ウクライナの学生, 医師, 科学研究者にとって, こうした機会はかけがえのないものであり, 医学の未来に向かって努力を惜しまないであろう.

  • オレクサンドラ リアベツ
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 53 巻 6 号 p. 525-529
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー

     「私はウクライナから来ました」と言ったときの受け取られ方は, 昨年と今とではまったく変わったものになってしまった. ウクライナがどこにあるのか知っている人も少ないような国であったのに, 今や, シェフチェンコ記念碑がキエフのどこにあるのか, イジュムがハリコフからどのくらい離れているのかまで知られている. 2022年2月以降に殺害されたウクライナ人の数を考えると, それは決してうれしいことではなく, むしろ世界に知られていないウクライナであってほしかったと思う. ウクライナの医療や教育は, 今, 戦争の影響を強く受けている. 爆発を繰り返し経験しても, 戦争に慣れるということは決してない. しかし, その状況に適応しようと試み, 自分の目標に到達するために必死に頑張ることはできる. いま現在, 安全が守られる日本で, 明るい電気の光の下, 温もりを感じながら勉強できる機会が与えられている自分はとても恵まれていると思う. そして, ここで得た知識やスキルが, これからのウクライナの発展に必要とされると確信しているからこそ, 怒りや痛みをコントロールできていると自覚するのである.

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