1996 年 27 巻 4 号 p. 211-218
医学教育の目標は, 社会的ニーズに対応して知識習得から自己学習能力の育成へと変化している. 1995年度より島根医大では, 早期医学体験学習として1年前期に医療施設と福祉施設における学習プログラムを開始した. このプログラムの特徴は,(1) 自己学習能力の育成,(2) 知識, 技術, 態度, 倫理の各面にバランスの取れた統合的教育,(3) コミュニケーション技法の修得,(4) 医系教官によるテュートリアル・システムにある. 早期医学体験学習について, 92%の学生が,「大変良い」または「良い」と高く評価をした. 教育目標のうち, 学生自己評価では「コミュニケーション」がもっとも高い到達度を示し, ついで,「態度や感性」「ケアの倫理性」「ニーズと期待」の順に続き,「医師とコワーカーとの連携」「医療・福祉の仕組み」については, 自己評価がやや低かった. 学生個人レポートから, 各教育目標の到達度は高く, 教育目標はほぼ達成したことが明らかになった. また, 受け入れ施設の評価も高かった. しかし, 目標到達度の低い学生も少数存在し, この学生へのテュートリアル・システムの強化が課題と考えられた.