人間・環境学会誌
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特集:人間・環境学会設立10周年記念シンポジウム報告
児童の空間認知と学校校舎の平面計画
宮本 文人
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ジャーナル 認証あり

1993 年 1 巻 2 号 p. 21-32

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抄録
最初に、空間認知の発達理論、建物内部における空間認知、認知地図を調べる方法について近年の研究成果を含めながら紹介をしている。児童の空間認知と学校校舎の平面計画に関する研究は、複雑な平面をもつ2校の小学校校舎において、2、3、5年生を被験者として、児童が校舎の平面構成を発達段階に応じて心理的にどのように捉えているかを空間認知の観点から調べている。認知地図を調べるのに用いた方法はスケッチマップ法、地点の再構成、投影収束法である。これより次のような結果が得られた。(1)スケッチマップでは校舎平面の面積が大きい学校で高学年の程多く描かれているが、地点の再構成では2、3年生の児童でも何人かは5年生とほとんど同じ位正確に地点を推定している。(2)認知地図の誤りに着目すると、校舎の一部が斜めに45度ふれている部分で、歪んで直角や平行等に捉える児童が多くみられた。一方、校舎がロの字型に配置されている部分では90度回転して捉える例がみられた。(3)スケッチマップ法や地点の再構成では誤りを示す児童も、投影収束法によると比較的正確な認知地図を示す。投影収束法はルート的知識を基にした方法であると考えると、これらの児童は少なくともルート的知識をもっており、校舎内で日常的な行動を行う上では、十分な空間認知能力をもっていると思われる。
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© 1993 人間・環境学会
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