人間・環境学会誌
Online ISSN : 2432-0366
Print ISSN : 1341-500X
1 巻, 2 号
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特集:人間・環境学会設立10周年記念シンポジウム報告
  • 佐古 順彦, 舟橋 國男
    原稿種別: 本文
    1993 年 1 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 1993/09/30
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル 認証あり
    1992年11月14日、東京大学工学部で人間・環境学会設立10周年記念シンポジウムが行われた。テーマは「環境認知と環境形成」で、人間の環境順応の二重の機能が取り上げられた。発表は、「対人的な相互作用が行われる空間」「学校環境セッティングを事例とした生活空間」「移動の空間」の3つのサブテーマのもとに行われた。討議をとおして、いくつかの基本的問題が明らかにされた。第1は、環境形成が単なる構築空間の創出ではなく、人間活動を含む社会・物理的実体の形成であること。第2は、発表されたすべての研究に明らかなように、環境認知が環境と行動を統合する機能をもつこと。第3は、環境の構造と獲得される空間スキーマの関連の研究提案、運転移動と歩行移動の比較研究、そして視覚障害者の空間学習の研究にみられるように、認知の文脈的束縛が環境形成の多様性と創造性の基盤となっていること。第4は、対人距離やクラウディングの領域における順応の効果や、経験による対処法の変化は、環境認知の動的な特性を示していること。このように環境形成における環境認知の役割は複雑で、一層の研究が期待される。
  • 西出 和彦
    原稿種別: 本文
    1993 年 1 巻 2 号 p. 7-12
    発行日: 1993/09/30
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル 認証あり
    この研究は、パーソナルスペースなど人間個体のまわりの空間の行動・認識上の特性を実験や行動観察により探り、それに基づく環境デザイン理論の基礎と方向を示すことが目的である。人間どうしの距離と向きは人間の意識や行動を規制し、動機付けとなり、それによって人間のまわりには目に見えない不均質な空間、いわゆるパーソナルスペースが形成される。その一側面は、他人から「離れたい」とする力により形成される個体域、指示代名詞コレ、ソレ、アレの使い分けによる指示領域により読み取れる。また立ち話や待ちの列などの実際の行動において、人間はパーソナルスペースや個体域の存在とそれを侵すことがどうなるかを認知して行動する。そして待ちの列ではその状況においてのある距離が「待っている」ことを認識させている。このように空間は行動の動機付けとなり、人間どうしの距離は行為や人間どうしの関係を可能と認識させる。このような人間の形成する空間の寸法的広がりは、お互いに通じ合うことばのようにほぼ絶対量的に同スケールで現われ、人間の行動特性に基づくスケール感、空間感覚として、建築・インテリア空間の設計で考えるスケールに対応させ特徴づけることができる。
  • 小西 啓史
    原稿種別: 本文
    1993 年 1 巻 2 号 p. 13-20
    発行日: 1993/09/30
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル 認証あり
    スペーシングを規定する要因は何であろうか。この論文では、パーソナル・スペースとクラウディングの2つを取り上げ、この問題について考えてみることにする。パーソナル・スペースは異方的構造をもっている。これを規定する要因は、"視覚的接触の様式"と"知覚された脅威"であると考えられる。特に、知覚された脅威は重要な要因である。われわれは、他者の存在を自尊感情への脅威と認知したとき大きな対人距離をとる。それによって、自己を防衛しようとする。クラウディングを規定する要因としては、過剰な刺激や行動の拘束などをあげることができる。さらに、個人の経験も重要である。われわれは、自分の経験にもとついて、これから起こる事態を予期するからである。これらの知見を環境形成に生かすには、社会的空間図式を明らかにする必要があるだろう。パーソナル・スペースは個人のもつ図式に従った行動であり、クラウディングは現実の行動と図式の間にズレがあるときに生じると考えられるからである。
  • 宮本 文人
    原稿種別: 本文
    1993 年 1 巻 2 号 p. 21-32
    発行日: 1993/09/30
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル 認証あり
    最初に、空間認知の発達理論、建物内部における空間認知、認知地図を調べる方法について近年の研究成果を含めながら紹介をしている。児童の空間認知と学校校舎の平面計画に関する研究は、複雑な平面をもつ2校の小学校校舎において、2、3、5年生を被験者として、児童が校舎の平面構成を発達段階に応じて心理的にどのように捉えているかを空間認知の観点から調べている。認知地図を調べるのに用いた方法はスケッチマップ法、地点の再構成、投影収束法である。これより次のような結果が得られた。(1)スケッチマップでは校舎平面の面積が大きい学校で高学年の程多く描かれているが、地点の再構成では2、3年生の児童でも何人かは5年生とほとんど同じ位正確に地点を推定している。(2)認知地図の誤りに着目すると、校舎の一部が斜めに45度ふれている部分で、歪んで直角や平行等に捉える児童が多くみられた。一方、校舎がロの字型に配置されている部分では90度回転して捉える例がみられた。(3)スケッチマップ法や地点の再構成では誤りを示す児童も、投影収束法によると比較的正確な認知地図を示す。投影収束法はルート的知識を基にした方法であると考えると、これらの児童は少なくともルート的知識をもっており、校舎内で日常的な行動を行う上では、十分な空間認知能力をもっていると思われる。
  • Hirofumi MINAMI, Naoki YOSHIDA
    原稿種別: 本文
    1993 年 1 巻 2 号 p. 33-40
    発行日: 1993/09/30
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル 認証あり
    The present study examined implications of a new theoretical concept of group space which was applied to three environmental settings, i.e., school buildings, a playground of a kindergarten and University cafeteria. In this attempt, basic principles and theoretical concepts of a social ecological approach developed by Binder (1972) and Stokols' (1987) notion of group x place transaction were applied and elaborated to the study of educational space. The social ecological approach was formulated as a dynamic perspective on the transaction between physical settings and group dynamic processes with several analytic concepts. They include groups space, socio-petal, socio-fugal space, behavioral settings, public, semi-public, private space, and temporal organization of space. From three pilot studies it was revealed and suggested that 1) school buildings had differentiated and segmented multi-faceted group space depending on different subsets of social groups (class, grade and student body), 2) in a University cafeteria male and female groups exhibited different seat-taking behavior and rules for maintaining group-space and coordinated eating and socializing behavior within the group space, and 3) a playground in a kindergarten was composed of some thirty-eight behavior settings that provided different environmental affordance for the three age groups and contained particular set of activity patterns in the use of physical settings. The implications of a social ecological dimension in educational settings and in other living environment at large were explicated in terms of their functions in regulating group processes and users' transactions with the environment. A conceptual model dealing with hidden dimensions of space as ethnomethod was finally proposed.
  • 久保田 尚
    原稿種別: 本文
    1993 年 1 巻 2 号 p. 41-46
    発行日: 1993/09/30
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル 認証あり
    自動車に乗っている時と歩いている時とでは、同じ道路を通行していても印象がかなり異なる。これは、通行の位置や速度が異なることや、行動に際しての視線や注意の内容が異なるためと想像される。自動車運転者の市街地認知構造が歩行者と明確に異なるのであれば、これまで主として歩行者を対象として行われてきた「都市のイメージ」の研究を、自動車運転者に拡張することが考えられよう。本稿では、そうした取り組みのひとつとして、交通計画の立場からの研究課題を探ったものであり、前半では課題の整理、後半では基礎的な研究の事例を紹介した。
  • 山本 利和
    原稿種別: 本文
    1993 年 1 巻 2 号 p. 47-54
    発行日: 1993/09/30
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル 認証あり
    この論文ではある目的地への人間の移動について2つの仮説的心理的枠組(原寸大の環境認知と対象化による環境認知)が提案された。環境の空間的特性は人間尺度で測定され、体性感覚的空間に取り込まれる。この現実的な認知過程をこの論文では原寸大の環境認知と名付けた。その認知過程は人間と環境との距離と方向にともなって伸び縮みする心理的ゴム紐でもって表現できる。環境を対象化する過程を通じて、環境の空間的特性は身体から離れ、その結果環境情報の記号としての利用が可能になる。この認知過程は対象化による環境認知と名付けられた。人間の移動は二つの心理的枠組の相互作用から成り立つことが、ミクロネシアの航海術や視覚障害者の歩行の例を取り上げながら論じられた。
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