2019 年 22 巻 1 号 p. 49-58
場所への愛着(人と場所との結びつき)に関連する数多くの概念(場所愛着概念)がこれまで提唱されてきている。本研究では、これまで提唱されてきた場所愛着概念相互の関連を定量的に分析しそれぞれの概念の位置づけを整理することで、今後の場所愛着研究における適切な尺度の開発や選択に寄与することを目的とする。このため、本研究では 2016 年までに主要な国際学術誌において発表された 148 編の論文を収集し、うち 67 編の論文から 69 尺度(質問項目 256)をレビューし、場所愛着尺度の定義、尺度の構成概念、尺度の項目について分析を行った。結果として、これまで提唱されてきた場所愛着概念は、概念によって対象とする空間の範囲(街区・近隣・市町村など)があり、さらに、場所愛着概念は物的な構成概念(自然の魅力・地域の利便性など)のみで構成される概念と、物的な構成概念に加えて社会的な構成概念(住民とのつながり・市民活動への参加意欲など)を含む概念があり、前者は一時的な居住地や観光地を対象とする愛着が多く、後者はコミュニティや近隣など空間の範囲が小さい領域に対する愛着で用いられる傾向が見られ、Place attachment は研究によって双方の場合で用いられることがあり、著者によって定義が暖昧であった。そして、それぞれの場所愛着概念間の関連性を分析したところ、対象とする近隣や市町村などの空間レベル(小規模・大規模)と、概念の含む意味の多様さである定義レベル(狭義・広義)によって、場所愛着概念の関連性を評価できることがわかった。