本研究では,若年者を対象とした実験室実験の結果から,公共空間を移動する際の手がかりとなる表示物の,「見落とし」に影響する環境要因の解明を目的とする。遮光空間にディスプレイを設置し,公共空間の静止画像を提示して探索実験と印象評価実験を行った。その結果から,「見落とし」に影響する要因として主に次の3つが示唆された。1)標的の配置条件や大きさが「見落とし」に総じて影響し、その中でも「非常口」は,色と図柄の連想度による影響を受ける。2)天井面の輝度軽減は天井付近の小さい標的,垂直面の輝度軽減は小型で低輝度の標的,表示数削減は文字や数字を主体として複数の情報を含む標的に対して,それぞれ「見落とし」の可能性を減少させる。3)垂直面の輝度軽減は空間の「明るさ感」「雑然さ」を抑制し,「広がり感」を向上させる。表示数削減は空間の「雑然さ」を抑制し,「広がり感」を向上させ,総じて好意的な印象を強め,主体の心理的負担軽減を促す。