人間・環境学会誌
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少年院と一般高校の生徒の社会的環境認知の比較
平田 乃美浅井 正昭
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1997 年 3 巻 2 号 p. 13-21

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抄録

矯正施設環境尺度CIES(Moos,1974)は、社会的環境に対するその成員の認知を測定するSocial Climate Sca1eのひとつである。本稿では、CIESを用いて、少年院と一般高校の生徒のそれぞれの所属集団に対する環境認知を測定し、物理的環境や教育目標の違いが生徒の心理・社会的環境認知に及ぼす効果を検討する。CIESの下位尺度9つのうち、少年院と一般高校の生徒の施設/学校環境認知に有意な差が認められたのは、「サポート」「自己表現」「自主性」「カウンセリング」「規律と組織化」「規則の明確さ」「教師の管理」の7尺度であった。このうち「サポート」「自主性」「カウンセリング」「規律と組織化」「規則の明確さ」の5尺度では、一般高校生が少年院在院生よりも施設/学校環境に対する望ましい態度や意識の高さを示した。逆に「自己表現」「教師の管理」の2尺度では、少年院は一般高校以上に自己表現ができ、しかし教職員から受ける管理は非常に厳しい環境であると捉えられていた。考察では、教職員の権限が強く生徒自治が不活発な少年院では集団と個との葛藤が少なく、一方、生徒間の関係が組織的に発達した一般高校では、集団の規範が生徒個人の行動に制限を加えている特徴を討議した。最後に、尺度構成の過程で概念の文化差が示唆された尺度:「自己表現」「自主性」「カウンセリング」の項目を吟味し、米国で標準化されたCIESで、文化の異なる日本の矯正施設を測定する際に必要な日本独自の尺度構成の考え方について検討した。

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© 1997 人間・環境学会
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