抄録
筆者らは,オイラーの多面体定理を高大の接続教材と捉え,数学Aや数学活用の内容を大きく逸脱しない学習指導案を作成し,授業を実践した。しかしトーラスの頂点,辺,面の数を求める場面で生徒は混乱した。この混乱の解決のため,現代数学を取り入れる試みが行われた数学教育現代化当時の中学校学習指導要領や教科書等を調査し,先行研究を検討した。その結果,授業を,位相幾何における頂点,辺,面の本質を捉えてオイラー数を考察するものに改変することが必要であると考えた。現代化の試みが不成功に終わった大きな要因は,現代数学を教育現場に持ち込むための工夫が不十分であったこととされている。本研究が導入を図る位相幾何についても,その頂点,辺,面の意味が学校で習得する意味と整合性をもたないため,そのままの形で学校現場に持ち込むことは難しい。筆者らは,教育現場に持ち込むための方策として,学校で学ぶ頂点,辺,面の定義から生徒をいったん切り離し,また,日常経験による理解の助けも借りるため,位相幾何における頂点,辺,面の本質的意味を,日常用語を用いて表すこととした。本論文は,この方策によってどのような課題が表出しどう克服したか,その過程をまとめたものである。