抄録
本稿は,質的研究におけるデータの取集と報告に関するものである。質的研究において(1)研究内で報告されたデータが他の研究のそれと比較できること,つまり比較可能性(Comparability)が高いこと,そして(2)データの分析結果や結論の適用可能範囲が検証できること,つまりトランスファラビリティ(Transferability)についての評価が可能であることは,その科学性や妥当性を保証する上で重要であると考えられている。これらの条件を満たすために厚い記述(ThickDescription)をおこなうことは,広く推奨されている。本稿では,研究の比較可能性を高め,トランスファラビリティの評価を可能とするための厚い記述について,交絡(Confounding)との関係からこれを議論し,研究枠組みの提案をおこなう。