抄録
ケナガコナダニTyrophagus putrescentiaeの警報フェロモンは蟻酸ネリルである。一般的に警報フェロモンは種特異的でないとされている。そこで近縁の4種のコナダニ類(サトウダニ, Carpoglyphus lactis, コオノホシカダニ, Lardoglyphus konoi, ムギコナダニAleuroglyphus ovatus, コナヒョウヒダニ, Dermatophagoides farinae)粗抽出物のケナガコナダニに対する活性を調べた。4種の粗抽出物(ムギコナダニは濃縮すると)は活性を示した。ガスクロマトグラフ法分析(GLC)の結果, 4種の活性部は, ケナガコナダニの場合と異なり, 2成分から成っていた。最も量の多いサトウダニ抽出物を精製し, 活性物質(100μg)を単離した。質量分析およびGLCの結果から, シトラール(ネラール40%, ケラニアール60%の混合物)と同定した。ケナガコナダニ以外のダニには蟻酸ネリルは存在しない。予備的な生物試験でサトウダニとコオノホシカダニはシトラールに強い活性を示し, これらのダニではシトラールを警報フェロモンと推定した。