衛生動物
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原著
マレーシアのサラワク州より発見された1新種の蚊,Topomyia (Suaymyia) kelabitense
宮城 一郎當間 孝子
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2010 年 61 巻 4 号 p. 353-361

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抄録
マレーシアのサラワク州の山岳地,バリオとバケラランの森林内で採集した蚊の幼虫から羽化した成虫標本の中に雄の生殖器の形態が著しく特殊化したギンモンカ属の蚊を発見した.本種はThurman, 1959が提唱したSuaymyia 亜属の特徴の一つ(雄の生殖器のclaspetteを欠く)に反するが,他の重要な特徴(第9腹板の形態)が一致することから,Suaymyia 亜属の種として取り扱った.この蚊の標本を本亜属の全種の記載と比較した結果,新種であることが判明したので,Topomyia (Suaymyia) kelabitense と命名し,雄雌の外部形態,雄の生殖器,蛹,幼虫の形態を詳細に記載した.本種が採集されたバリオとバケラランは海抜約1,000 mの高地で,ケラビット族が生活の場としている熱帯雨林である.本種の幼虫は二次林に自生するクズウコン科(Family Marantaceae)の植物Phrynium capitatum の葉腋で1個体ずつ採集された.終令幼虫は大きな顎(maxilla)を有し,他の蚊の幼虫を飼育中の容器に入れると直ちに捕食した.Topomyia 属の成虫は花の蜜や樹液を吸い,人畜を吸血しないとされている.
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© 2010 日本衛生動物学会
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