日本組織適合性学会誌
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総説
第1回 同種造血幹細胞移植の現状と免疫遺伝学の新たな課題
一戸 辰夫
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2007 年 14 巻 1 号 p. 39-54

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抄録

同種造血幹細胞移植(allogeneic hematopoietic stem-cell transplantation, allo-HSCT)の臨床応用が開始されて以来, 今日まで, ほぼ半世紀が経過した. 移植プロトコールや幹細胞ソースの多様化を背景として, 近年, allo-HSCTに対する需要はますます増大しつつあるが, 依然としてその治療関連毒性は高く, 生着不全や移植片対宿主病(graft-versus-hostdisease, GVHD)に代表される免疫学的合併症の克服が大きな課題とされている. 移植関連合併症のリスクを最小化するためには適切なドナー選択が必要との立場から, 科学的な根拠に基づいた「組織適合性基準」を確立することを目指して, ヒトの免疫遺伝学は同種免疫応答とその制御にかかわる様々な問題の解決を要請されてきた. Allo-HSCTの領域で得られたその成果は膨大であり, HLAのDNAタイピング技術の向上と国際的な臨床データベースの充実に伴い, HLAクラスI・クラスII遺伝子群のアリル型適合性あるいはHLAクラスI分子とキラー細胞免疫グロブリン様受容体(killer cell immunoglobulin‐like receptors, KIRs)の適合性と移植成績との関連が, 現在も詳細かつ継続的に解析されている. また, ヒトゲノム配列解読や全染色体ハプロタイプ地図(HapMap)作成プロジェクトの進展により, マイナー組織適合性抗原・サイトカイン遺伝子多型・自然免疫応答遺伝子多型など, HLA領域以外に存在するゲノム多様性の移植臨床における意義を網羅的に探索することも実現可能となりつつあり, 今後これらの研究成果を通じて, allo-HSCTの安全性と有効性が一層向上することが強く期待されている.

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© 2007 日本組織適合性学会
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