日本組織適合性学会誌
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総説
第3回 臓器移植における免疫寛容の基礎と臨床
村上 徹河合 達郎
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2008 年 14 巻 3 号 p. 359-366

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抄録

移植医療において, 移植臓器に免疫寛容を誘導することは究極の目標といえる. これまでマウスなど小動物の基礎実験をもとに, 大動物でも寛容導入の試みが様々な方法を用いて行われてきた. 最近, ようやくサルで免疫寛容誘導の報告もみられるようになり, ドナー骨髄細胞移植によるmixed chimerismを基礎とした方法では臨床での寛容誘導の成功例もみられるようになった. 今後はさらに多様な方法で免疫寛容誘導が臨床で試みられるようになると予測される. 1.はじめに 過去20年の間に, 効果的な免疫抑制薬の開発に伴い, 移植臓器の短期生着率は飛躍的に向上してきた1). しかし, 慢性拒絶反応に対する効果的な予防や治療方法が存在しないことや, 免疫抑制薬そのものの副作用により, 長期成績は未だ満足できるものとなっていない2). このため免疫寛容の誘導は免疫抑制法がこれほど進歩した現在でも, 移植医療の究極の目標として捉えられている.

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© 2008 日本組織適合性学会
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