日本組織適合性学会誌
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原著論文
日本人におけるHLA-DMB遺伝子の多型性の塩基配列の決定並びにPCR-RFLP法による解析
河田 寿子成瀬 妙子能勢 義介安藤 麻子猪子 英俊
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1995 年 2 巻 1 号 p. 10-15

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抄録

HLA-DM遺伝子は, HLA-DQ,DP間に存在することが報告された新しいクラスII遺伝子であり, クラスII分子による抗原提示の過程, すなわち外来抗原ペプチドとの結合に重要な機能を担っていることが示唆されている. 本論文では, 日本人のDMB遺伝子の多型性の解析と, 他のクラスII抗原遺伝子との相関について検討した結果, 日本人においてDMB* 0101, * 0102, * 0103が確認され, さらに新対立遺伝子595newが存在することが明らかとなった. また, PCR-RFLP法での日本人一般集団の解析において, 白人とは異なる遺伝子頻度が観察された. また, 他のクラスII遺伝子との相関解析より, DMB* 0101とDPB1* 0402およびDRB1* 1502に連鎖不平衡が認められた. DMB遺伝子多型性解析は, クラスII分子が細胞膜上に発現して賦与される, いわゆる抗原提示能の解析に有用であると考えられ, また, 今後の移植医療や, HLAに相関する疾患のさらなる発症機構の究明に役立つものと期待される. HLA-DQ,DP間に存在の報告された新しいクラスII遺伝子であるHLA-DM遺伝子は, 他のクラスII遺伝子と同様にα鎖, β鎖のヘテロダイマーより形成され, mRNAでの発現は認められているものの, タンパクレベルでの同定がなされておらず, その機能は不明であった(1). しかしながら最近, DM遺伝子の欠損により, クラスII分子による抗原提示能の低下した突然変異細胞にDM遺伝子を導入すると, 抗原提示能が回復したという報告から, DM遺伝子それ自身が他のクラスII分子による抗原提示に重要な機能を担っていることが明らかにされた(2,3). DM遺伝子の多型性は, 他のクラスII遺伝子と異なり, DMA,DMB遺伝子ともに主として第3エキソンに存在する. 白人の解析ではDMA*0101〜串0104, DMB* 0101〜* 0104のそれぞれ4種の対立遺伝子の存在が報告されているが(4), 日本人での解析は行われていない. そこで我々は, 日本人HLA-DMB遺伝子について, その多型性の解析と, 他のクラスII抗原遺伝子との相関を検討したので報告する.

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© 1995 日本組織適合性学会
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