日本組織適合性学会誌
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シリーズ:異種のMHC
トリのMHC
椎名 隆
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1998 年 4 巻 3 号 p. 146-154

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抄録

これまで, MHC領域が解析されていた鳥類はニワトリである. しかし, そのMHC領域におけるクラスIおよびクラスII遺伝子の構成並びに発現遺伝子数はその他の動物種とは異なった様相を呈している. 本稿において, ニワトリと近縁であると考えられているウズラのMHC領域の遺伝子解析を行ったところ, クラスI領域とクラスII領域とが独立していること, 少なくとも4つ以上のクラスI遺伝子が発現していることなどから, ウズラとニワトリとのMHC領域の遺伝子構成に大きな相違が見い出された. この理由として, 両者の生育する環境や人為的な選抜淘汰などが挙げられる. 主要組織適合遺伝子複合体(major histocompadbility complex:MHC)は自己と非自己を認識し, 免疫応答を司ることにより, 個体の生体防御機構の一旦を担っている抗原をコードする遺伝子群である. ヒトのMHC領域は第6染色体短腕上の6p21.3に位置し, 約4Mb内に230近くの遺伝子が存在するという, 他のゲノム領域と比較して遺伝子密度が顕著に高い領域である(1). また, この領域は, 高度な遺伝的多型性を有していること, 100以上の疾患と高い相関を持つことなどの興味深い特徴を有する. ニワトリのMHC領域(B遺伝子型)も, 組織適合性, 補体活性, T-B細胞間相互作用など種々の免疫機能に関与していることはもとより, マレック病, ラウス肉腫, 家禽コレラなどに対する抵抗性, 産卵率, 育成率および死亡率などの経済形質等についても血清学的手法並びに分子生物学的手法を用いた解析によりMHC領域により支配されていることが報告されている. これらは他の総説にまとめられているので参照されたい(2〜4). これまでの鳥類のMHCについての研究は1961年の最初の報告以来, 現在に至るまでニワトリに関する知見を中心に展開されてきた(5). ここでは, ニワトリのMHC領域の遺伝子構成についての概略, 並びにウズラを材料に用いた著者らの研究成果に基づくトリMHC領域における遺伝子構成の差異および今後の展望について概説する.

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© 1998 日本組織適合性学会
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