ミルクサイエンス
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原報
マレーシア発酵食品tempehから単離された乳酸菌Enterococcus faecalis TH10が産生する抗E. coli O–157活性成分の精製
大平 猪一朗田村 隆黒川 一中上 博美稲垣 賢二田中 英彦
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2000 年 49 巻 2 号 p. 81-88

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抄録

 マレーシアの発酵食品テンペから単離された乳酸菌Enterococcus faecalis TH10の培養液中に出血性病原大腸菌O–157の増殖を抑制する活性が見つかった。乳酸菌には抗菌性ペプチドであるバクテリオシンを産生する株がいくつか知られており, とくにE. faecalisのバクテリオシンには哺乳類の赤血球を溶血する作用が知られている.しかしテンペから単離されたE. faecalis TH10の抗菌活性成分はヒトおよびウサギの赤血球サンプルに対する溶血活性はなかった。また本菌の活性成分はプロテアーゼやペプチターゼの処理を受けても抗菌活性が低下せず, 近縁の乳酸菌に対する抗菌活性も低いことからバクテリオシンとは異なる部類の抗菌物質であることが示された。E. faecalis TH10からUV照射により抗菌物質生産能が高くなった突然変異株E. faecalis TH40を誘導した。この変異株の産生する活性物質を各種カラムクロマトグラフィで精製, 結晶化し, こはく酸として同定した。E. faecalis TH40はこはく酸の他にも中性の抗菌活性成分も産生していたのでその精製も行ったが, 精製途中の回収率が低いために単一物質になるまで精製はできなかった。

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© 2000 日本酪農科学会
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