抄録
本論文では,X線CTにおけるメタルアーティファクト問題を取り扱う.CTにおいてX線を通さない金属物体が被写体内部に存在する場合,再構成画像に筋状アーティファクトが発生して画質を低下させる.この問題を回避する簡便な解析的画像再構成法として,金属を通過する値が大きい投影データを周囲の投影データから補間により埋め,その後にフィルタ補正逆投影(FBP)法により画像再構成を行う手法が用いられる.しかし,この手法では,補間誤差が画像再構成の過程でランプフィルタ処理と逆投影により画像全体に大きく伝搬して,直流シフトやシェーディングアーティファクトが発生する.本論文では,補間誤差の影響を削減する手法として,FBP法の代わりに微分逆投影(DBP)法を適用することに基づく新手法を提案する.DBP法では,フィルタ処理と逆投影の順序を逆転させフィルタ処理を逆投影後にユーザが選択した方向に行えるため,金属部分の投影データの補間誤差が広がる効果を抑制することが可能で,これによりアーティファクトを削減する効果が期待される.提案手法の有効性をシミュレーション実験により示す.