抄録
個々の画像において個別的,個人的な判断をするよりも,実験群の全体の傾向を判断するために,画像処理を行いその結果を統計処理することで,結果の客観性はより担保されるはずである.われわれは,糸球体上皮細胞障害によって変化が認められる細胞の構造について,野生型のマウス,糖尿病のマウス,加齢マウス,変異型マウス,糖尿病の変異型マウスの5種類のマウスの走査電子顕微鏡で撮影された糸球体上皮細胞の画像を用いて,局所領域のグレースケール画像から,最終的に細胞の細胞体の領域の二値画像を作成する方法を提案する.二値画像作成では,前処理にコントラスト強調とモルフォロジ処理によるオープニングを取り入れ,二値化には動的閾値処理のひとつであるSauvola法を用いた.作成した二値画像から領域の面積と円形度を計算し,マウスの種類による差異がみられるかを調査した.その結果,円形度と面積を用いて作成したヒストグラムと,平均値,中央値のプロットの結果から,野生型のマウスが糖尿病や加齢により,変異型マウスの特徴に近づく傾向を捉えることができた.画像処理のさまざまな段階で目視による判断と比較する場面もいまだ存在するが,将来的には,さまざまなパラメータを総合的に判断して数値による識別を可能とするようなアルゴリズムを開発することも可能な印象を得た.